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UPDATE:2008/06/30(Mon) 16:57

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坂口安吾

推理小説について 作家名:坂口安吾

随筆。
横溝正史の「蝶々殺人事件」をメインテクストに、角田喜久雄小栗虫太郎木々 高太郎、などを俎上に上げ、日本の推理小説について少しばかり苦言を呈する内容。
ドストエフスキーなども引き合いに出されてる。
日本の探偵小説はげんがくすぎるところがある。ヴァン・ダインの悪影響かと思うが、死んだ小栗虫太郎氏などゝなると、探偵小説本来の素材が貧困で、それを衒学でごまかす、こういう衒学は知性のあべこべのもので、実際は文化的貧困を表明しているものなのである。世間一般にあることだが、独学者に限って語学の知識をひけらかしたがるが、語学などは全然学問でも知識でもなく、語学を通して読まれたテキストの内容だけが学問なのだが、一般に探偵小説界は、まだ知識の語学時代に見うけられる。
 法医学上のことなども、衒学的にふりかざゝれており、別にそうまで専門的なことを書く必要もないところで法医学知識をふりまわす。そのくせ重大なところで、実は法医学上の無智をバクロするというような欠点もある。

初出:「東京新聞 第一七八一号、一七八二号」   1947(昭和22)年8月25日、26日
底本:「坂口安吾全集 05」筑摩書房   1998(平成10)年6月20日初版第1刷発行
(2008/06/07(Sat) 20:24)
夜長姫と耳男 作者 坂口安吾
兎のように上に長い耳を持つ耳男は、師匠の名代で「夜長の長者」の仕事を請け負うことになった。
長者には一粒種の娘「夜長姫」がいた。美しい姫の顔を見つめるうち、耳男の心には不可解な混乱が生まれた。
長者はヒメの守り本尊を彫る仕事を何人かに競わせ、最も優れた者には褒美として美しい機織り奴隷の娘エナコをやると言う。
耳男はエナコを哀れとは思うが貰う気はまるでない。それがエナコの疳に障ったのか、彼女は唐突に耳男の大きな耳を切り落とした。
片耳を落とされたことを「虫に咬まれたこと」と言う耳男に対し、夜長姫は無邪気で明るい「虫も殺さぬ」童女の笑顔を浮かべたまま、エナコに命じてもう片方を切り落とさせた。
夜長姫の笑顔に心を奪われてしまったことにおそれを感じた耳男は、仏像ではなくモノノケの像を造ることに魂を注ぎ込んだ。
三年かけてついに完成させたモノノケの像は、「耳の長い何ものかの顔」をした「ヒメの笑顔を押し返すだけの力のこもった怖ろしい物」で……。

初出:「新潮 第四九巻第六号」
1952(昭和27)年6月1日発行
(2006/10/16(Mon) 13:49)


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