♥ | 桜の樹の下には(新字旧仮名) |
| 作家名:梶井基次郎
内容は桜の樹の下には(新字新仮名)と同一。
「桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!」 不安と狂気を胸に抱き、精神的に不安定になっている男が、友人に語る一人称の形を取った掌編。 かげろうの死骸が浮かぶ水たまりから、美しいと感じられるもと表裏一体に無数の死があると見た彼は、魂の解放を感じて狂喜する。 俺には惨劇が必要なんだ。その平衡があつて、はじめて俺の心象は明確になつて来る。 男の歓喜を聞き、友人は冷や汗を流して恐怖するのだった。 初出: 「詩と詩論 第二冊」1928(昭和3)年12月 底本: 現代日本文學大系 63 梶井基次郎・外村繁・中島敦集 出版社: 筑摩書房 (2008/03/14(Fri) 10:25)
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♥ | 桜の樹の下には(新字新仮名) |
| 作家名:梶井基次郎
旧仮名遣(正仮名遣)で発表された作品の表記を現代仮名遣に改めたもの。 内容は桜の樹の下には(新字旧仮名)と同一。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」 不安と狂気を胸に抱き、精神的に不安定になっている男が、友人に語る一人称の形を取った掌編。 かげろうの死骸が浮かぶ水たまりから、美しいと感じられるもと表裏一体に無数の死があると見た彼は、魂の解放を感じて狂喜する。 俺には惨劇が必要なんだ。その平衡があって、はじめて俺の心象は明確になって来る。 男の歓喜を聞き、友人は冷や汗を流して恐怖するのだった。 初出: 「詩と詩論 第二冊」1928(昭和3)年12月 底本: 檸檬・ある心の風景 出版社: 旺文社文庫、旺文社 (2008/03/14(Fri) 10:22)
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♥ | 三つの指環(仮) |
| 作家名:芥川龍之介
芥川の未決定稿。 はじめに物語の筋とおぼしきものが書かれ、その後に書きかけのシナリオ形式のものが綴られている。
王位を継いだばかりの若い王は不可解な乞食に「害なす者があれば知らせてくれる」という指輪を渡される。 落魄した賢い娘は、乞食から「どのような男の心も捉える」という銀の指環を渡される。 市場で壺をひさぐ老爺は、乞食から「人の秘密も残らずわかる」という鉄の指輪を渡された。 さて、この三人と三つの指輪を巡る物語は……。 (2007/11/21(Wed) 17:38)
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♥ | 悪魔 |
| 作家名:芥川龍之介
伴天連(padre 戦国時代に日本に戦況に訪れたカトリックの神父・司祭格の宣教師)ウルガンは透視眼の持ち主と言われていた。 彼が織田信長の前で語ったという「悪魔」の諷諭。 南蛮寺(教会)の前。ウルガンはとある姫君の輿の上に一匹の悪魔が座しているのを見た。 姫が熱心な天主教徒であるのを知っていたウルガンは、すぐさま悪魔をとらえると、南蛮寺の祭壇の前へ引き出し、審問を始めた。 すると悪魔は 「姫を堕落させたいと願っている反面、その清らかな魂を曇りなきものにしたいと念じずにはいられない。天国の光と地獄の闇とが自分の胸中に一つになっているようだ。私は寂しくて仕方がない」 と言い、涙を流したのだった。 (2007/07/10(Tue) 15:32)
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♥ | 老いたる素戔嗚尊 |
| 作家名: 芥川龍之介 日本神話の「オオクニヌシの根の国訪問」のエピソードを、スサノオノミコトの視点で描いた作品。 大蛇退治をなした素戔嗚尊は櫛名田姫を妻とし、部族の長として心安らかな日々を送っていた。 二人の間には、母親に似た優しい息子の八島士奴美と、父親に似た気丈な娘の須世理姫ができた。 やがて櫛名田姫が病を得て没すると、悲しみにくれる素戔嗚は長の位を八島士奴美に譲り、幼い須世理姫を連れて海の向こうへ移り住む。 更に時が流れ、素戔嗚の悲しみが癒えつつあった頃、須世理は母親の櫛名田の面影を残す美しい娘となっていた。 ある日、須世理は葦原醜男という若者を素戔嗚のまえに連れてきた。 須世理と醜男とが仲睦まじげであるのを見た素戔嗚の心中に、若き日の荒い気性が甦ってきた。 彼は醜男の命を奪うために、様々な難題を与えた。そして……。 初出: 「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1920(大正9)年3〜6月 (2007/07/02(Mon) 14:31)
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♥ | 結婚難並びに恋愛難 |
| 作家名: 芥川龍之介 アラビアの王女ゼライイドはたぐいまれな美女であり、知性にも富んでいた。 年頃となった王女には二百八十人もの花婿候補があったが、どれも彼女の眼鏡には適わない。 王宮の奥深くで侍女達に囲まれて過ごす王女であっても、しかしとうとう「恋愛」に捕らえられる日が訪れた。 ある夜、彼女は恋しい男と手に手を取って出奔した。その恋人とは……。 初出: 「婦人の国」1925(大正14)年7月 (2007/07/02(Mon) 13:47)
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♥ | 六の宮の姫君 |
| 作家名: 芥川龍之介 今昔物語から採った男と女の物語を、芥川龍之介が哲学的に小説化。 父母を頼りに、その父母を失ったあとは言い寄ってきた優しい男を頼りに生きる、六の宮のほとりに住む姫君。 やがて男は遠い任国へ。地獄も極楽も知らないその人生が終わりを迎えるとき……。 初出: 「表現」1922(大正11)年8月 (2007/07/02(Mon) 13:36)
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♥ | 三つの宝 |
| 作家名:芥川龍之介 初出:「良婦之友」1922(大正11)年2月
シナリオ形式の作品。 ある森の中。ずるがしこい盗人達が王子を欺く。 人の良い王子は、ぼろのマントとなまくら剣と穴あきブーツを「姿を消すマント」「鉄をも切り裂く名刀」「千里を跳ぶ靴」の三つの宝だと思いむ。 ある国で王との婚礼を良しとしない姫が捕らえられていると聞いた王子は、三つの宝の力で姫を助け出そうと王城へ向かった。 ぼろぼろのマントの御蔭で下男と間違われ、侵入者と思われずに済んだ王子は、あっけなく王女の元にたどり着いた。 そこに現れた黒人王は、本物の三つの宝を持っていた。 自分のブーツは偽物かもしれぬが、王女といれば千里を舞うのと同じ事、と言い切る王子。 怒った王がマントで姿を消せば、王女と王子は嫌いな王の姿が見えぬ事をむしろ喜んでみせる。 王はついに名刀を抜き、王の刀が王子の刀を叩き折る。 しかし王子をかばう王女を傷つけられぬと、王は剣を投げ捨てた。 王は本心から王女を愛していた。しかしやり方を間違えていたという彼に、王子も自分も考え違いをしていたと応じる。 王は王女を解放し、故郷へ戻る決心をする。 そして王子と王女は「悪魔のような王や魔法の道具を持った王子など、おとぎ話の中だけのこと」と悟り、醜く美しい、もっと広い世界に旅立つことを宣言するのだった。 (2006/12/02(Sat) 20:08)
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♥ | 奉教人の死 |
| 作家名:芥川龍之介 ある年の御降誕(クリスマス)の夜、長崎のキリスト教会「さんた・るちや」の前に一人の少年「ろおれんぞ」が行き倒れていた。 「生まれは天国、父はデウス」と言って笑う天涯孤独の少年は、女の子のようにかわいらしく、また信心深いので、信者達は天からの授かりものと慈しみ育てた。 ことさら武士の出で「悪魔をも挫がうず大男」の「しめおん」は、「ろおれんぞ」を弟のようにかわいがっていた。 数年後、信者の傘張の娘が「ろおれんぞ」に恋をしたが、「ろおれんぞ」は意にも介さない。 すると娘は長老達の前で「身籠もっていて、父親は『ろうれんぞ』だ」と告げる。 「ろうれんぞ」は否定するが、信者達もそして兄と慕う「しめおん」も彼が不義をはたらいたと責め、皆は破門を宣告する。 「ろうれんぞ」は教会を去り、傘張の娘は女の赤子を生む。 「しめおん」は去ってしまった「ろおれんぞ」の顔立ちを赤子の中に思い起こしてかわいがったが、娘はそれを快く思っていなかった。 一年ほど後、長崎は大火に見舞われ、傘張の娘の赤子は火炎の中に巻き込まれてしまった。 取り残された赤子を救いに飛び込んだのは「ろおれんぞ」だった。 家が崩れ落ちる中「ろおれんぞ」は赤子を娘に投げ渡すが、自らは逃げ遅れる。 「しめおん」によってようやく救い出された「ろおれんぞ」だったが、全身が焼け爛れ、すでに虫の息だった。 懸命に看病する「しめおん」は、その中で「ろおれんぞ」が娘の恋慕を受け入れなかった理由、そして赤子の父親であるはずがない証拠を見ることとなる……。
初出: 「三田文学」1918(大正7)年9月 (2006/10/16(Mon) 16:33)
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♥ | ろまん燈籠 |
| 作家名:太宰治 入江家の人々は揃いもそろって変わり者。 彼らの楽しみは、皆で一つの物語を連作すること。 その日は末弟が物語を造り始める事となったが、どうにも良い案が浮かばない。 そこで彼は、「アンデルセン童話集、グリム物語、ホオムズの冒険などを読み漁(あさ)っ」て、そこから剽窃することにした。 その物語の尻を次女が接ぎ、母親が接ぎ、長女が接ぎ、長兄が接ぎ……そして、醜い魔女と美しい娘ラプンツェル、そして王子の、継ぎ接ぎな物語が完成した。 (2006/10/16(Mon) 13:49)
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