♥ | 眞夏の夜の夢(真夏の夜の夢)旧字旧仮名 New! |
| 真夏の夜の夢 原題:A Midsummer Night's Dream 作家名:シェークスピヤ(シェイクスピア) 訳者名:坪内逍遙
イングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアによる戯曲。 (このテクストは「台本」形式です) 以下あらすじ。
アセンズ(アテナイ)公シーシアス(テセウス)とアマゾン国のヒッポリタ(ヒッポリュテ)との結婚式が間近に迫っていた。 貴族の若者ハーミアとライサンダーは恋仲だが、ハーミアの父イージアスはディミートリアスという若者とハーミアを結婚させようとしていた。 ハーミアが聞き入れないため、イージアスは「父の言いつけに背く娘は死刑とする」という古い法律に則って、シーシアスに娘ハーミアを死刑にすることを願い出る。 シーシアスは悩んだ末、自らの結婚式までの4日の内に、ハーミアへにディミートリアスと結婚するか死刑かを選ばせる。 ライサンダーと森へ駆け落ちすることにしたハーミアは、これを友人ヘレナに打ち明けた。 ハーミアの許嫁ディミートリアスを愛しているヘレナは、ハーミアを思うディミートリアスが彼らを追うと考え、自分も二人の後を追った。
一方、シーシアスとヒッポリタの結婚式で演じる芝居の練習のため、6人の職人達が夜の森で集まることを決めていた。
かくて、10人の人間が、夏至の夜に妖精の集う森へ出かけていくこととなる。
その森では妖精王オーベロンと女王タイターニアが夫婦喧嘩で仲違いしていた。 腹の虫が治まらないオーベロンは小妖精パックに、タイターニアのまぶたに「目を覚まして最初に見たものに恋してしまう」媚薬を塗るよう命ずる。 慌て者のパックは森で眠っていたライサンダーたちにも媚薬を塗る。 結果、ライサンダーとディミートリアスがヘレナを愛するようになってしまった。 さらにパックは森に来ていた職人のボトムの頭をロバに変えたのだが、目を覚ましたタイターニアが最初に観てしまったのがこのロバ男だった。
タイターニアが気の毒になったオーベロンは、彼女とロバ男に掛かった魔法を解き、2人は和解。 ライサンダーにかかった魔法も解かれ、ハーミアとの関係も元通りになる。 一方、ディミートリアスはヘレナに求愛。イージアスに頼んでハーミアの死刑を取りやめるよう説得する。 こうして2組の男女と妖精王夫婦は円満な関係に落ち着き、6人の職人たちもシーシアスとヒッポリタの結婚式で無事に劇を行うことになったのだった。 (2015/06/22(Mon) 14:58)
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♥ | 天守物語 |
| 作者名:泉鏡花
1917年初出の戯曲。台本形式。
播州姫路。白鷺城の天守には、あやかし達が棲んでいた。 主は絶世の美女・富姫。奥女中・薄を筆頭に、桔梗、萩、葛、女郎花、撫子の侍女達に傅かれている。 そこへ猪苗代から妹・亀姫が遊びに来る。お供は舌長姥と朱の盤。亀姫が手土産の「猪苗代の城主の首級」を眺めながら、煙管で一服したり、手鞠に興じたり。 亀姫の帰り際、富姫は鷹狩りの一行から奪った見事な鷹を土産として持たせたのだった。 その晩、天守に一人の若侍が上がって来た。 鷹匠の姫川図書之助は、行方の知れぬ鷹を探せと、城主・播磨守のに命じられてきたのだった。 怪異あやかしである富姫と対面しても一行に動じぬ図書之助の涼やかな態度に感じ入った富姫、本来なら生かして返さぬところを還してやることにした。図書之助から人間界、こと侍の世界の話を聞くうち、富姫はその理不尽さ呆れ、同情するうちに、その思いは思慕、恋情恋へと転じていた。 富姫は図書之助が天守へ登った証拠として、姫路城主が家宝「青竜の御兜」持たせてやるのだった。 ところが、その兜のために図書之助は家宝を盗み出したと疑われ、処刑されそうになる。 大立ち回りの末、あわやの所を逃げだした図書之助、天守へ駆け上り……。 (2012/01/30(Mon) 17:28)
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♥ | ロミオとヂュリエット |
| ロミオとヂュリエット 作家名:シェークスピヤ(シェイクスピア) 訳者名:坪内逍遙
翻訳の初版:ロミオとジュリエット 早稲田大学出版部, 明43.9?
イングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアによる戯曲。 初演年度については諸説あるが、概ね1595年前後と言われている。
(このテクストは「台本」形式です)
以下あらすじ。
舞台は14世紀のイタリアの都市ヴェローナ(ローナ)。 モンタギュー家とキャピュレット家は血で血を洗う抗争に明け暮れている。 ある日、ロザライン(ローザライン)という美女に懸想しているモンタギュー家の若者ロミオ(ローミオー/ロメオ)は、彼女に会うためにキャピュレット家のパーティに忍び込んだ。 そこで彼はキャピュレット家の令嬢ジュリエット(ヂュリエット/ジウリエッタ)に一目惚れする。ジュリエットもまた彼に一目惚れした。 互いの家は仇同士。結婚は許されない。 ロミオは旧知の修道士ロレンスに相談。ロレンスはこの二人の若者によってモンタギュー家とキャピュレット家の不和が解消できるかも知れないと考え、彼等の結婚を取り持つことにする。 しかし運悪しく、ロミオは街頭で両家の争いに巻き込まれ、親友・マキューシオ(マーキューシオー)を殺され、その仕返しにキャピュレット夫人の甥でジュリエットの従兄であるティボルト(チッバルト)を殺してしまう。 ヴェローナの大公エスカラスは、ロミオを追放の罪に処する。 ロミオは、修道士に相談した。修道士ロレンスは、ロミオには減刑の嘆願をするからしばらくは温和しくし、追放先から必ず連絡を寄越すように諭す。 彼が旅立ったあと、大公エスカラスの親戚のパリス(パーリス)との縁談を持ちかけられたジュリエットも修道士に相談を持ちかけた。 ロミオ以外の男と結婚するなら生きたまま墓にはいるとまで思い詰めている彼女に、ロレンスは仮死状態となる薬を渡した。 死んだふりをして埋葬され、のちにロミオと共に墓を出て、共に町の外で暮らすように、と。 ジュリエットは修道士の案に賛成し、実行する。 修道士はロミオにこの計略を伝えるべく使者を立てる。 しかし、名家キャピュレットの令嬢の「婚礼直前の死」というスキャンダラスで悲しい話は、使者の足よりも早くロミオの耳に入ってしまった。 真実を知らないロミオは、ジュリエットの「亡骸」の前で毒を呷って死ぬ。 目覚めたジュリエットは、死んだロミオの短剣をもって自害した。 総てが終わり、総てを知った両家の者達は、哀しみの中、和解したのだった。 (2010/11/15(Mon) 18:13)
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♥ | 新ハムレット |
| 作家名:太宰治
戯曲(台本)形式形式の作品。 シェイクスピアの『ハムレット』の近代的翻案、あるいはパロディ。 太宰本人は「はしがき」に 『謂わば LESEDRAMA ふうの、小説だと思っていただきたい』 と書いている。レーゼドラマ(Lese-drama)とは、ドイツ語で「読む(Lese)ドラマ」の意。 読まれることを目的に書かれた、劇としての上演を目的としない脚本形式の文学作品。 漢字語で「書斎劇」、英語で「クローゼット・ドラマ(closet drama)」という。 沙翁の原作との違いは ・ハムレットはかなり困った性格のエロ青年で、死なない。 ・クローヂヤス(クローディアス)は妙に言葉遣いの優しい叔父さんで、死なない。 (もしかしたら「先代ハムレット殺し」に関わっていない?) ・ガーツルード(ガートルード)は総入れ歯のおばさまで、最終的に庭園の小川で入水自殺する。 (あるいは「先代ハムレット殺し」に関わっている?) ・ポローニヤスを殺すのはハムレットではなくクローヂヤス(クローディアス)。 ・レヤチーズ(レアティーズ)はノルウェーとの海戦で戦死。 ・オフィリヤ(オフィーリア)は前向きな性格で、ハムレットの子を妊娠中。自殺しない。 ・ホレーショー(ホレイショ)がやたらういヤツ。 等々。 (2009/08/03(Mon) 21:18)
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♥ | 修禪寺物語 |
| 作家名:岡本綺堂
旧字旧仮名版。 内容は新字新仮名版と同一。
綺堂が修善寺に遊んだ折り、修禅寺に伝わる寺宝「頼朝の面」という奇妙な木彫の面を見て着想したという、鎌倉時代を描いた戯曲。
元久元年七月十八日(1204年8月14日)。 能面師・夜叉王は、二人の娘「かつら」「かえで」、弟子の晴彦の四人で、伊豆・修善寺に暮らしている。 長女のかつらは、都生まれの亡き母親に似たか、公家気質で気位が高く、高貴な身分の男性と結婚を望み、二十歳の歳になった今でも独身でいる。 十八歳の次女かえでは、父親似の職人気質で、父の弟子である晴彦を夫に迎えていた。 夜叉王は伊豆に流された頼家から、彼の顔を写した能面を作るように依頼されていたが、半年を過ぎても納品できずにいた。 その日、痺れをきらした頼家が、自ら夜叉王の工房へ催促にやってきた。 気性の激しい頼家は、まだ納得行く作品ができぬという夜叉王に斬り掛かる。 慌てた晴彦ができあがっていた面を持ってくる。 頼家はその出来を褒めたが、夜叉王は納得していない。 生きた人を写した面に「死相」が浮かんでいると言うのだ。 しかし面を気に入ったという頼家。かつらは面を箱に収め献上する。 かつらの美しさをみとめた頼家は、かつらに奉公に上がるよう命ずる。 かつらは自らの望みかなったと喜び、面を携えて家を出て行く。 修禅寺に戻った頼家は、かつらに亡き妻の名である若狭を名乗らせた。 一時、心安らぐ頼家主従。 しかしその夜、北条方が修禅寺を襲撃した。 俄に聞こえる騒乱の物音に、かつらの身を案じる夜叉王一家。 夜陰から現れた落ち武者をかえで・晴彦夫婦が助け起こすと、それは男装したかつらだった。 父の打った面を被り頼家の衣裳を身につけたかつらは、自ら頼家と名乗りを上げることにより、我が身に敵を引きつけ頼家を逃がそうと務め、深手を負ったのだった。 しかし、寺より避難してきた僧侶から、すでに頼家も討たれたと聞かされ、かつらは力を失う。 かつらが身につけ、敵の返り血を浴びた頼家の面を手にした夜叉王は、今事切れようとする娘を前に歓喜し、笑う。
「幾たび打ち直してもこの面に、死相のあり/\と見えたるは、われ拙きにあらず、鈍きにあらず。源氏の將軍頼家卿が斯く相成るべき御運とは、今といふ今、はじめて覺つた。神ならでは知ろしめされぬ人の運命、先づわが作にあらはれしは、自然の感應、自然の妙、技藝神に入るとはこの事よ。伊豆の夜叉王、われながら天晴れ天下一ぢやなう。」
死に行くかつらもまた笑う。
「わたしも天晴れお局樣ぢや。死んでも思ひ置くことない。些とも早う上樣のおあとを慕うて、冥土のおん供……。」
娘の苦しげな顔を見た夜叉王は、弟子に筆と紙を取りに行かせ、若い娘の断末魔を「後の手本」に写生するのだった。
初出:「文芸倶楽部」 1911(明治44)年1月 底本:「日本現代文學全集34 岡本綺堂・小山内薫・眞山青果集」講談社 1968(昭和43)年6月19日発行 (2008/06/07(Sat) 20:16)
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♥ | 修禅寺物語 |
| 作家名:岡本綺堂
新字新仮名版。 内容は旧字旧仮名版と同一。
綺堂が修善寺に遊んだ折り、修禅寺に伝わる寺宝「頼朝の面」という奇妙な木彫の面を見て着想したという、鎌倉時代を描いた戯曲。
元久元年七月十八日(1204年8月14日)。 能面師・夜叉王は、二人の娘「かつら」「かえで」、弟子の晴彦の四人で、伊豆・修善寺に暮らしている。 長女のかつらは、都生まれの亡き母親に似たか、公家気質で気位が高く、高貴な身分の男性と結婚を望み、二十歳の歳になった今でも独身でいる。 十八歳の次女かえでは、父親似の職人気質で、父の弟子である晴彦を夫に迎えていた。 夜叉王は伊豆に流された頼家から、彼の顔を写した能面を作るように依頼されていたが、半年を過ぎても納品できずにいた。 その日、痺れをきらした頼家が、自ら夜叉王の工房へ催促にやってきた。 気性の激しい頼家は、まだ納得行く作品ができぬという夜叉王に斬り掛かる。 慌てた晴彦ができあがっていた面を持ってくる。 頼家はその出来を褒めたが、夜叉王は納得していない。 生きた人を写した面に「死相」が浮かんでいると言うのだ。 しかし面を気に入ったという頼家。かつらは面を箱に収め献上する。 かつらの美しさをみとめた頼家は、かつらに奉公に上がるよう命ずる。 かつらは自らの望みかなったと喜び、面を携えて家を出て行く。 修禅寺に戻った頼家は、かつらに亡き妻の名である若狭を名乗らせた。 一時、心安らぐ頼家主従。 しかしその夜、北条方が修禅寺を襲撃した。 俄に聞こえる騒乱の物音に、かつらの身を案じる夜叉王一家。 夜陰から現れた落ち武者をかえで・晴彦夫婦が助け起こすと、それは男装したかつらだった。 父の打った面を被り頼家の衣裳を身につけたかつらは、自ら頼家と名乗りを上げることにより、我が身に敵を引きつけ頼家を逃がそうと務め、深手を負ったのだった。 しかし、寺より避難してきた僧侶から、すでに頼家も討たれたと聞かされ、かつらは力を失う。 かつらが身につけ、敵の返り血を浴びた頼家の面を手にした夜叉王は、今事切れようとする娘を前に歓喜し、笑う。
「幾たび打ち直してもこの面に、死相のありありと見えたるは、われ拙きにあらず。鈍きにあらず。源氏の将軍頼家卿がかく相成るべき御運とは、今という今、はじめて覚った。神ならでは知ろしめされぬ人の運命、まずわが作にあらわれしは、自然の感応、自然の妙、技芸神に入るとはこのことよ。伊豆の夜叉王、われながらあっぱれ天下一じゃのう。」
死に行くかつらもまた笑う。
「わたしもあっぱれお局様じゃ。死んでも思いおくことない。ちっとも早う上様のおあとを慕うて、冥土のおん供……。」
娘の苦しげな顔を見た夜叉王は、弟子に筆と紙を取りに行かせ、若い娘の断末魔を「後の手本」に写生するのだった。
初出:「文芸倶楽部」 1911(明治44)年1月 底本:「日本の文学 77 名作集(一)」中央公論社 1970(昭和45)年7月5日初版発行 (2008/06/07(Sat) 20:13)
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