Encoding of this website is Japanese(Shift_JIS). Japanese fonts required to view this website.

ここは【お姫様倶楽部Petit】の備忘録的リンク集【Petitの本棚】です

ワード検索
キーワード: AND OR
検索結果:125
[その他小説]十萬石(十万石)
作者名:泉鏡太郎(泉鏡花)

松代真田家第6代藩主・真田幸弘(幸豊)公と、家老・恩田木工民親のエピソード。
「上」は倹約を推し進める主君の心身を思って「小鳥を飼ってみては」と勧めた家臣某に対して、それは贅沢だと判じた幸豊公の某に対する裁断(仕打ちと云っても良いかも)と、それに対する恩田杢(木工)の忠言。
「下」は、恩田杢(木工)を家老職勝手係に取り立てようとしたときの顛末。

旧字・旧仮名
(2012/01/30(Mon) 16:48)
[児童文学・童話]ピーターパンとウェンディ
原題:PETER PAN PETER AND WENDY(ピーターパン:ピーターとウェンディ)
作家名:ジェームス・マシュー・バリー(Sir James Matthew Barrie)
訳者名:katokt

ピーターパンの物語は2作の小説と1作の戯曲(『ピーター・パンあるいは大人になりたがらない少年』:初演1904年(全三幕)。出版1928年(全五幕))を経て、現在皆が良く知る物語へと変化した。

以下あらすじ
厳格な父親と可愛らしい母親(どうやら過去にピーターパンと出会ったことがあるらしい)との間に生まれた三人の子供たち――ウェンディ・モイラ・アンジェラとジョン、そしてマイケルのダーリングきょうだい。
ある晩彼等の家にピーターパンがやってくる。
ところがピーターは子供たちの「乳母役」の犬に吠え立てられて、影を落として退散してしまった。
一週間後、ピーターは影を取り戻しに来た。ウエンディは影とピーターを縫い合わせる。
ピーターは「パパとママが僕が大人になったら、何になってほしいなんてことを話してる」事に幻滅して、生まれたその日に家を飛び出したと語る。
そして「乳母がよそ見をしてるときに乳母車から落ち」「七日の内に這い上がれなかった」「迷子の男の子達」が送り込まれるネバーランドで、男の子達の隊長をしているとも。(ちなみにネバーランドに女の子がいない理由は「女の子はカシコイから乳母車から落ちたりしない」から、らしい)
ウエンディと弟たちはピーターに誘われて(妖精ティンカーベルの「粉」の力で)空へと飛び出し、「2つ目の角をまがって、あとは朝までまっすぐ」の場所にあるネバーランドへ向かう。
ネバーランドではウエンディが皆のお母さん役となり、二人の弟たちは他の「迷子の男の子」同様にピーター達と冒険(遊び)暮らした。
人魚と出会い、インディアンと交流したり、ウエンディが男の子達にお話をしてやったり、フック船長率いる海賊と戦ったり……。
しかしやがて、ウェンディたちは、両親の家に帰りたいと訴え、ピーターは不承不承彼等をダーリング家へ戻す。
迷子の男の子達も、ウェンディの家の子どもになることになる。
ただし、ピーターはやはり大人になりたくないが為に、ダーリング家の子になることを拒む。
それでもウエンディと別れたくないピーターに、ウエンディ達の母親は「年に一度、春の大掃除のときだけ、ウェンディをネバーランドに連れて行く」という提案をした。
翌年、ピーターはウェンディを連れに来たが、その翌年は来ない。ある年は来たり、ずっと来なかったり。
暫くピーターが来ない年が続いたあと、何事もなかったかのようにピーターが訪れたときには、ウェンディはすっかり大人になっていた。彼女は結婚しており、ジェーンという娘がいた。
迷子の男の子達もみな立派な大人になっていて、それぞれの仕事を持ち、それぞれの家庭を持っている。
子供のままのピーターは、大人になったウェンディの代わりにジェーンを連れて、ネバーランドに飛び立った。

更に年月が流れ、ウエンディの髪には白いものが混っている。ジェーンも大人になって、マーガレットという娘がいた。
今ピーターは、春の大掃除の時期にはマーガレットをネバーランドへ連れて行っている。
マーガレットが大人になったら、ピーターのお母さん役はマーガレットの娘が、その娘が大人になったらそのまた娘が、受け継ぐことになるだろう。
(2011/06/25(Sat) 13:00)
[児童文学・童話]ケンジントン公園のピーターパン
原題:PETER PAN IN KENSINGTON GARDENS
作家名:ジェームス・マシュー・バリー(Sir James Matthew Barrie)
挿絵:アーサー・ラッカム(Arthur Rackham)
訳者名:katokt

高名な「人間とも鳥とも妖精ともつかない男の子」ピーターパンは、もともと小説『小さな白い鳥』の中で描かれたエピソード群の登場人物だった。
この小説中の13章〜18章がピーターパンの登場エピソードとされる。各章タイトルは以下の通り
  • 第十三章:ケンジントン公園ひと回り
  • 第十四章:ピーター・パン
  • 第十五章:鶫の巣
  • 第十六章:締め出しの時刻
  • 第十七章:小さな家
  • 第十八章:ピーターの山羊
後に作者バリは『小さな白い鳥』からピーターパン関連のエピソードを抜き出し、修正加筆して『ケンジントン公園のピーターパン(PETER PAN IN KENSINGTON GARDENS)』として出版した。
んだけど、何故か同タイトルで二章分(13章と18章)のテキストがないバージョンもあったりする。
で、このテキストは、後者の翻訳版。
以下あらすじ
生後7日の赤ん坊ピーターは、人になることを拒絶して、窓からケンジントン公園に向かって飛び出し、公園の「赤ん坊の王宮とサーペンタイン池の間の広々とした芝生」の上に着地した。
そこでピーターは、人間でも小鳥でもない「どっちつかず」となる。
ピーターは小鳥たちと一緒に笛を奏でて暮らすこととなり、やがて妖精達も仲良くなる。
ある時、マイミー(別訳では「メイミイ」)という少女が、公園の閉門時間に間に合わず、公園内に「閉め込まれ」てしまう。
マイミーは妖精達の舞踏会や婚礼の騒動に巻き込まれる。妖精達は眠るマイミーの為に小さな家を造る。しかしマイミーが夢から覚めると、その家は小さく小さくなって、やがて雪の中に消えてしまった。
時が過ぎ、ピーターは母の元に帰りたいと願うようになる。
ピーターは妖精達の力を借りて空を飛び、彼の生まれた家へ戻る。
開け放たれた窓から母の寝室へ戻るが、眠っている母親に呼びかけるのを躊躇する。
行方不明の赤ん坊の気配を感じた母親が、うわごとのように彼の名を呼ぶが、ピーターはそれに答えなかった。
公園での小鳥たちや妖精たちとの暮らしが捨てきれなかったのだ。
「公園へ一度戻って、友人達に別れの挨拶をしてから、もう一遍帰ってくる」と決めて公園へ舞い戻ったピーターだったが、結局何ヶ月も家へ戻らなかった。
妖精達が彼を戻そうとしなかったというのも理由の一つだった。彼等は理由を付けてはピーターを引き留めていた。
ある晩とうとう決心して家へ飛び戻ったピーターだったが、数ヶ月前は開け放たれていた窓には閂がかけられてい、中には入れない。
覗き見れば、母親はピーターではない赤ん坊を抱いて、幸せそうに笑っている。
ピーターは必死に母親を呼ぶが、その声は彼女には届かなかった。
こうしてピーターは永遠に「閉め出され」てしまったのだった。
一応「童話」カテに入れたけれど、実際は大人向けの作品かも知れない。
(2011/06/25(Sat) 11:47)
[寓話]AESOP'S FABLES
作家名:イソップ
英訳者名:ジョージ・ファイラー・タウンゼント師(Reverend George Fyler Townsend)

イソップ寓話のタウンゼント版の英語原文。
一括表示ファイルで、リンク付き目次、アルファベット順の索引付き。
元のファイルの場所はこちら(プロジェクトグーテンベルグ内)。

hanama(ハナマタカシ)さんによる日本語訳版はこちら
(2011/06/16(Thu) 21:05)
[お伽噺・昔話]竹取物語
作家名:作者不詳

「竹取物語」の原文、の一例。(後述するが、竹取物語には「原本」と呼べる物がなく、写本によって微妙な差違がある)

『竹取物語』は、日本最古といわれる物語であり、世界的にも初期の部類に入るSF。
以下、Wikipedia:竹取物語よりその概要について引用。
『竹取物語』は通称で、『竹取翁の物語』とも『かぐや姫の物語』とも呼ばれた。
仮名によって書かれた最初期の物語の一つでもある。

成立年は明らかになっていない。
原本は現存せず、写本は室町時代初期の後光厳天皇の筆と伝えられる「竹取物語断簡」が最古といわれ、完本では安土桃山時代の天正20年(1592年)の奥付を有する「武藤本」が最古といわれる。
しかし、10世紀の『大和物語』、『うつほ物語』や11世紀の『栄花物語』、『狭衣物語』などに『竹取物語』への言及が見られ、また『源氏物語』「絵合」巻に「物語の出で来はじめの祖なる竹取の翁」とあることから、遅くとも10世紀半ばまでに成立したと考えられている。
通説は、平安時代前期の貞観年間 - 延喜年間、特に890年代後半に書かれたとする。
元々、口承説話として伝えられたものが『後漢書』や『白氏文集』など漢籍の影響を受けて一旦は漢文の形で完成されたが、後に平仮名で書き改められたと考えられている。

作者についても不詳である。
作者像として、当時の推定識字率から庶民は考えられず上流階級に属しており、貴族の情報が入手できる平安京近隣に居住し、物語の内容に反体制的な要素が認められることから、当時権力を握っていた藤原氏の係累ではなく、漢学・仏教・民間伝承に精通し、仮名文字を操ることができ、和歌の才能もあり、貴重だった紙の入手も可能な人物で、性別は男性だったのではないかと推定されている。
以上をふまえ、源順、源融、遍昭、紀貫之、紀長谷雄などの作者説が唱えられているが、いずれも決め手に欠けている。

登場人物と時代
かぐや姫・老夫婦・帝などは架空の人物だが、実在の人物が登場していることも本作品の特徴である。
5人の公達のうち、阿倍御主人(あべ の みうし)、大伴御行(おおとも の みゆき)、石上麻呂(いそのかみ の まろ)は実在の人物である。また、車持皇子(くらもちのみこ)のモデルは藤原不比等(ふじわら の ふひと)、石作皇子(いしづくりのみこ)のモデルは多治比嶋(たじひ の しま)だっただろうと推定されている。
この5人はいずれも壬申の乱の功臣で天武天皇・持統天皇に仕えた人物であることから、奈良時代初期が物語の舞台に設定されたと考えられている。
主人公のかぐや姫も、垂仁天皇妃である迦具夜比売(かぐやひめ、大筒木垂根王の女)との関係や、赫夜姫という漢字が「とよひめ」と読めることから豊受大神との関係について論じられることもある。
また、この時期に富士山が噴気活動中の火山として描かれていることから、科学論文に成立などが引用されることがある古典のひとつである。
(2011/05/16(Mon) 19:50)
[その他小説]薤露行(かいろこう)
作家名:夏目漱石
初出:明治38年11月「中央公論」

アーサー王伝説を元にした短編。5章構成。
アーサー王と騎士達は北方で行われる槍試合に出るためカメロット(キャメロット)の居城を後にする。
留守を守る王妃ギニヴィア(グィネヴィア/ギネビア)の元へ、怪我を理由に王達と別行動をしたランスロットが現れる。
二人は道ならぬ恋をする仲だった。
ギニヴィアが不吉な夢を見たと語るのを聞いたランスロットは、不吉を感じながらも、王の後を追って旅立つ。(夢)
シャロットの台(うてな:高殿)に住まい機を織る女は、その目で外を見れば呪われるため、鉄鏡越しに世の中を見ている。
その鏡に、北へ向かう騎士が映る。女はそれがランスロット卿と認め、その名を呼ぶ。
気配を感じ取ったランスロットの目と、思わず窓から顔を出した女の視線は交錯するが、ランスロットはその場から急ぎ立ち去った。
砕けた鏡の鉄片と、千切れた織物の糸とが舞い上がり、蜘蛛の糸のように女の体にまとわりつく。女はランスロットを呪う言葉を叫び、死ぬ。(鏡)
アストラットに立ち寄ったランスロット。
馬上試合に遅れたのを恥た彼は、正体を隠して試合に出ようと考え、城主の息子から武具を借り受ける。
城主の娘エレーンは彼に恋心を抱く。父や兄は諦めさせようとするが、エレーンは思い断ちがたく、騎士元へ行くと、赤い布を贈り、愛の証として身につけて欲しいと懇願する。
この布と借りた武具によってによって正体を隠せると考えたランスロットは、この申し出を受ける。
ランスロットはエレーンに「戻るまで楯を与って欲しい」と告げ、試合へ向かう。(袖)
王と騎士達がカメロットに帰還する。しかしランスロットの姿はない。
ランスロットが「美しき少女」から贈られた赤い布を身につけ戦っていたとアーサーに聞かされたギニヴィアは、嫉妬の念に駆られる。
そこへモードレッド卿が現れ、王の前でランスロットとギニヴィアの不義を告発する。(罪)
馬上試合で傷を負ったランスロットは、熱に浮かされて姿を消す。
アストラットのエレーンは戻ってこないランスロットに焦がれるあまり、衰弱して死ぬ。
遺言により亡骸はランスロットへの文と数多の花々と共に小舟に乗せられ、川に流される。
舟はカメロットの水門で止まり、城内から人々が集まり来る。
エレーンの持っていた文を読んだギニヴィアは、彼女が「美しき少女」であると気付き、涙を流した。(舟)

ちなみにこの作品のタイトルは、漱石自身の解説によれば、
「題は古楽府こがふ中にある名の由に候。ご承知の通り『人生は薤上の露の如くかわきやすし』と申す語より来り候。無論音にてカイロとよむつもりに候」
だとか。(2011/03/08(Tue) 20:01)
[その他小説]エリザベスとエセックス(ELIZABETH AND ESSEX)
作家名:リットン・ストレチー Lytton Strachey
訳者名:片岡鉄兵
初出:「エリザベスとエセックス」富士出版社、1941(昭和16)年8月

エリザベスは「エリザベスT世(Elizabeth I, 1533-1603)」のこと、エセックスは「エセックス伯ロバート・デヴルー(Robert Devereux, Earl of Essex,1566- 1601)のこと。
エリザベス1世の寵臣(愛人)レスター伯ロバート・ダドリーは、エセックス伯ウォルター・デヴルーの未亡人レティス・ノリスと再婚。
レティスには前夫との間に一子ロバートがあった。
義父ダドリーは次第にエリザベスから疎まれるようになっていったが、入れ替わるようにエセックス伯は寵愛されるようになる。
53歳の老処女王と、20歳の若い貴族の「愛」と「死」の物語。
一応「伝記小説」の範疇にはいる、と思われ。

ちなみに
福田逸訳の版には「王冠と恋」という副題が付いている。
エリザベスとエセックス―王冠と恋 (中公文庫)(2011/03/08(Tue) 17:03)
[フェアリーテール]赤ずきんちゃん
作家名:グリム兄弟
訳者名:楠山正雄
仏: Le Petit Chaperon rouge、独: Rotkaäppchen

ヨーロッパ伝承民話をグリム兄弟が再編集した童話。
残酷だったり理不尽だったりする部分を削除改編した結果、道徳的な内容(親の言いつけを守らないと怖い目に遭う&悪いことをしてしまったらよく反省する)になっている。

改変前は「狼はおばあさんを殺すと、赤ずきんを騙してその肉と血を食べさせました」「狼は赤ずきんを食べやすくするため、服を脱がせました」「赤ずきんは狼に食べられてしまいました(後に、狼が猟師に殺されるという挿話が入るようになるが、赤ずきんは助け出されない)」という内容だった。

以下粗筋。

赤い頭巾を被っているので「赤ずきん」と呼ばれている、可愛らしい女の子がいた。
ある日、赤ずきんは母親から「森の向こうのおばあさんの家」までお菓子とワインを届けるよう言われる。
赤ずきんが森へ入ると、狼が現れる。
赤ずきんは、問われるままにおばあさんの家を教え、言われるままに道草をする。
狼は先回りしておばあさんを襲い、丸呑みにすると、おばあさんになりすまして、赤ずきんを待ち伏せる。
遅れて着いた赤ずきんは、狼が化けたおばあさんに話しかけるが、おばあさん同様丸呑みに食べられてしまう。
腹が膨れた狼が寝込んでいると、通りかかった猟師が異変に気付いて、狼の腹を割いて、呑まれていた二人を助け出す。(猟師は狼の腹に石を積めて縫い直す。石が原因で狼は死ぬ)
赤ずきんは言いつけを守らなかったことを反省したのだった。
(2011/03/08(Tue) 16:19)
[文学論など]文芸は進化するか、その他
作家名:平林初之輔
初出:「新潮 第二七年第六号」1930(昭和5)年6月号

ごく短い文学論のようなもの。以下の六編からなる。

一 文芸は進化するか?
二 文学作品と広告
三 課題小説
四 小説の危機
五 ヴァン・ダインの探偵小説論
六 新作家輩出時代

五章にて探偵小説を書くときの二十則に言及。

平林初之輔(ひらばやし はつのすけ、1892年11月8日 - 1931年6月15日)
作家・推理作家・文芸評論家・プロレタリア文学運動の理論家。
ヴァン=ダインなどの作品を翻訳して日本に紹介した。
(2010/12/14(Tue) 17:59)
[文学論など]意慾的創作文章の形式と方法
作家名:坂口安吾

安吾先生による、文章読本的な短めの評論。
 小説の文章を他の文章から区別する特徴は、小説のもつ独特の文章ではない。なぜなら小説に独特な文章といふものは存在しないからである。
(中略)
 要するに小説は明快適切でなければならないものであるが、小説の主体を明快適切ならしめるためには、時として各個の文章は晦渋化を必要されることもありうるのだ。そして描写に故意の歪みを要するところに――換言すれば、ある角度を通して眺め、表はすところに――小説の文章の特殊性もあるのである。
 なぜなら、小説は事体をありのままに説明することではない。小説は描かれた作品のほかに別の実体があるわけのものではない。小説はそれ自体が創造された実体だからである。そこから小説の文章の特殊性も生まれてくる。
(中略)
 作家が全てを語ることは不可能である。我々の生活を満してゐる無数のつまらぬ出来事を一々列挙するとせば、毎日少くも一巻を要すであらう。
 そこで選択が必要となる。そして、これだけの理由でも「全き真実」「全き写真」といふことは意味をなさなくなるのである。
(中略)
 作家の精神はありのままに事物を写さうとする白紙ではないのである。複雑――むしろ一生の歴史と、それを以てして尚解き得なかつた幾多の迷路さへ含んでゐる。そしてこの尨大な複雑が、いはば一つの意力となつて凝縮したところに漸く作家の出発があるのである。言葉を芸術ならしむるものは、言葉でもなく知識でもなく、一に精神によるものであるが、併し精神を精神として論ずることは芸術を説明する鍵とならない。
(中略)
 勝れた作家は各々の角度、各々の通路を持つてゐる。通路は山と海ほどの激しい相違があるけれども到達する処は等しい。同じ人物をピエルとシャートフの相違で描いても、要するに全貌を現したあとでは同じものになる。モオパッサンはピエルの方法でしかシャートフが描けないのである。
(中略)
 今我々は一人物の外貌を描写しようとしてゐる。特徴のある顔、甚だ表情のある手、それよりも短い身長と、しかも奇妙にゴツゴツした動きが特に目をひき易い。しかも猫のやうな声、時々まるで変化する眼の具合、これらを精密に描いたなら、読者はその外貌を読んだだけで、この男の性格や心の底を見抜くことが出来るほどだ。そこで我々はこの人物の外貌を精細に描写したいばかりに、情熱でウズウズしてゐる。併し長い紙数を費して一気にこの男の外貌の全部を描いてゐたら、読者は却つて退屈を感じ、そのために混雑した不明瞭な印象を受けるばかりで、大切な核心を読み逃してしまふであらう。
(中略)
 小説の文章は書くべき事柄を完膚なく書きつくさねばならないのである。即ち、作家の角度から選択され一旦書くべく算出された事柄は、あくまで完膚なく書きつくさねばならないのだ。たまたま文章の調子に迷ひ右を左と書きつくらうやうな過ちは犯してならないことである。
(後略)
初出:「日本現代文章講座 ※(II)―方法篇」厚生閣 1934(昭和9)年10月13日発行
(2010/11/04(Thu) 20:15)
[推理・探偵小説]まだらのひも(まだらの紐)
原題:The Adventure of the Speckled Band
作家名:サー・アーサー・コナン・ドイル
初出:「ストランド・マガジン」1892年2月
訳者名:海野十三/大久保ゆう改訳

1883年4月初め。
ヘレンとジュリアのストーナ姉妹の亡母の遺産は、義父である医師ロイロット博士に管理されていた。
遺産は遺言により姉妹が結婚する時に半分ずつ相続することになっていた。
しかしジュリアが結婚直前に謎の死を遂げる。
彼女は死の間際に「まだらの紐(Speckled Band)」という言葉を遺した。
ダイイングメッセージから、近くで野営していたロマのバンド(band)が連想されたが、証拠はなく、事件は迷宮入りした。
2年後、ヘレンは屋敷の改築のために以前ジュリアの使っていた部屋を使用することとなった。
部屋を移ったその夜、静けさの中で不穏な物音を聞いたヘレンは、不安に駆られ、ホームズに事件の究明を依頼した。
(2010/11/04(Thu) 14:47)
[推理・探偵小説]まだらの紐
原題:The Adventure of the Speckled Band
作家名:サー・アーサー・コナン・ドイル
初出:「ストランド・マガジン」1892年2月
訳者名:coderati

1883年4月初め。
ヘレンとジュリアのストーナー姉妹の亡母の遺産は、義父である医師ロイロット博士に管理されていた。
遺産は遺言により姉妹が結婚する時に半分ずつ相続することになっていた。
しかしジュリアが結婚直前に謎の死を遂げる。
彼女は死の間際に「まだらの紐(Speckled Band)」という言葉を遺した。
ダイイングメッセージから、近くで野営していたジプシーのバンド(band)が連想されたが、証拠はなく、事件は迷宮入りした。
2年後、ヘレンは屋敷の改築のために以前ジュリアの使っていた部屋を使用することとなった。
部屋を移ったその夜、静けさの中で不穏な物音を聞いたヘレンは、不安に駆られ、ホームズに事件の究明を依頼した。
(2010/11/04(Thu) 14:43)
[推理・探偵小説]技師の親指
原題:The Adventure of the Engineer's Thumb
作家名:サー・アーサー・コナン・ドイル
初出:「ストランド・マガジン」1892年3月号
訳者名:coderati

開業したワトソン先生の所に水力技師ヴィクター・ハザリーが治療に訪れる。
ハザリーは、ドイツ人のライサンダー・スターク大佐から水圧機の修理を高報酬で依頼されたが、依頼内容に不自然さを感じて依頼主を問い詰めたところ殺されそうになり、逃げようとして親指を切断された、という。
興味を抱いたワトソンは、彼をベーカー街221Bに連れて行き、ホームズと共に詳しい話を聞くことにした。
(2010/11/04(Thu) 14:31)
[文学論など]小説作法
作家名:永井荷風

永井荷風先生が「税金の支払い分の稿料のために」と冗談めかしつつ書いた小説の書き方。
短文だが、鋭い。
初学者もし小説にでも書いて見たらばと思ひつく事ありたらばまづその思ふがままにすらすらと書いて見るがよし。しかして後添刪てんさく推敲すいこうしてまづ短篇小説十篇長篇小説二篇ほどは小手調こてしらべ筆ならしと思ひて公にするなかれ。そのうち自分にても一番よしと思ふものを取り丁寧に清書してもし私淑ししゅくする先輩あらばつてを求めてその人のもとに至り教を乞ふべし。菓子折なぞは持参するに及ばず。唯草稿を丁寧に清書して教を乞ふ事礼儀の第一と心得べし。小説のことなればことごと楷書かいしょにて書くにも及ばじ、草行そうぎょうの書体をまじふるも苦しからねど好加減いいかげんくずかたは以てのほかなり。疑しき所は『草訣弁疑そうけつべんぎ』等の書についてみずから正せ。
(2010/05/10(Mon) 20:35)
[その他文献]タウンゼント版イソップ寓話集について
イソップ寓話の標準英語版の翻訳者 ジョージ・ファイラー・タウンゼント師と、タウンゼント版イソップ寓話について、ウィキペディアの記述と、和訳をなさったhanama氏のウェブサイトの記述を参考に、簡易にまとめる。(2010/04/07(Wed) 14:19)
[寓話]タウンゼント版イソップ寓話集(一括表示版)
作家名:イソップ
英訳者名:ジョージ・ファイラー・タウンゼント師(Reverend George Fyler Townsend)
日本語翻訳者名:hanama(ハナマタカシ)

1話から312話まで一括表示。
データが大きいので、表示に時間がかかるかも知れません。
(2010/04/07(Wed) 14:13)
[寓話]タウンゼント版イソップ寓話集 271-312 話
作家名:イソップ
英訳者名:ジョージ・ファイラー・タウンゼント師(Reverend George Fyler Townsend)
日本語翻訳者名:hanama(ハナマタカシ)

イソップ寓話の内、以下の41編を収録。

271、真理と旅人。
272、人殺し。
273、ライオンと狐。
274、ライオンと鷲。
275、メンドリと燕。
276、道化と田舎もの。
277、烏と蛇。
278、猟師と馬乗り。
279、王子と絵のライオン。
280、ネコとヴィーナス。
281、牝ヤギたちのあご髭。
282、ラクダとアラブ人
283、粉屋と息子とロバ
284、カラスとヒツジ。
285、キツネとイバラ。
286、オオカミとライオン。
287、イヌとハマグリ。
288、アリとハト。
289、ウズラと鳥刺し。
290、ノミと人。
291、盗賊とオンドリ。
292、イヌと料理人。
293、旅人とプラタナス。
294、ウサギたちとカエルたち。
295、ライオンとジュピターとゾウ。
296、子ヒツジとオオカミ。
297、金持ちと皮なめし職人。
298、難破した男と海。
299、二匹のラバと盗賊。
300、マムシと鑢。
301、ライオンとヒツジ飼い。
302、ラクダとジュピター。
303、ヒョウとヒツジ飼いたち。
304、ロバと軍馬。
305、ワシとワシを捕まえた男。
306、禿頭とアブ。
307、オリーブの木と、イチジクの木。
308、ワシとトビ。
309、ロバとロバ追い。
310、ツグミと鳥刺し。
311、バラとアマランス。
312、太陽に文句を言うカエル。
(2010/04/07(Wed) 13:55)
[寓話]タウンゼント版イソップ寓話集 241-270 話
作家名:イソップ
英訳者名:ジョージ・ファイラー・タウンゼント師(Reverend George Fyler Townsend)
日本語翻訳者名:hanama(ハナマタカシ)

イソップ寓話の内、以下の30編を収録。

241、狐とライオン。
242、フクロウと鳥たち。
243、捕らえられたラッパ兵。
244、ライオンの皮をかぶった驢馬。
245、雀と兎。
246、ノミと牡牛。
247、善い者と悪い者たち。
248、鳩と烏。
249、マーキュリーと樵。
250、鷲と烏。
251、狐と鶴。
252、ジュピターとネプチューンとミネルヴァとモーモス。
253、鷲と狐。
254、人とサテュロ。
255、驢馬と買い手。
256、二つの袋。
257、泉の鹿。
258、烏と狐。
259、父親を埋葬するヒバリ。
260、蚊と牡牛。
261、母犬とその子。
262、犬と皮。
263、羊飼いと羊。
264、セミとフクロウ。
265、猿とラクダ。
266、農夫とリンゴの木。
267、二人の兵士と泥棒。
268、ご神木。
269、母親と狼。
270、驢馬と馬。
(2010/04/07(Wed) 13:48)
[寓話]タウンゼント版イソップ寓話集 211-240 話
作家名:イソップ
英訳者名:ジョージ・ファイラー・タウンゼント師(Reverend George Fyler Townsend)
日本語翻訳者名:hanama(ハナマタカシ)

イソップ寓話の内、以下の30編を収録。
211、鷹とナイチンゲール。
212、犬と鶏と狐。
213、狼と山羊。
214、ライオンと牡牛。
215、山羊と驢馬。
216、町の鼠と田舎の鼠。
217、狼と狐と猿。
218、アブと二輪戦車をひく驢馬。
219、漁師たち。
220、ライオンと三頭の牡牛。
221、鳥刺しと、蝮。
222、馬と驢馬。
223、狐とお面。
224、鵞鳥と鶴。
225、盲人と狼の子。
226、犬どもと狐。
227、医者になった靴屋。
228、狼と馬。
229、兄と妹。
230、雀蜂と山鶉と農夫。
231、烏とマーキュリー。
232、北風と太陽。
233、敵同士。
234、軍鶏と山鶉。
235、蛙のお医者様。
236、ライオンと狼と狐。
237、犬の家。
238、狼とライオン。
239、鳥と獣と蝙蝠。
240、放蕩ものと燕。
(2010/04/07(Wed) 13:41)
[寓話]タウンゼント版イソップ寓話集 181-210 話
作家名:イソップ
英訳者名:ジョージ・ファイラー・タウンゼント師(Reverend George Fyler Townsend)
日本語翻訳者名:hanama(ハナマタカシ)

イソップ寓話の内、以下の30編を収録。
181、鷲と猫と猪。
182、泥棒と宿屋の主人。
183、ラバ。
184、鹿と葡萄の木。
185、蛇と鷲。
186、烏と水差し。
187、二匹の蛙。
188、狼と狐。
189、胡桃の木。
190、蚋とライオン。
191、猿とイルカ。
192、烏と鳩。
193、馬と鹿。
194、子山羊と狼。
195、予言者。
196、狐と猿。
197、泥棒と番犬。
198、人と馬と牛と犬。
199、猿たちと二人の旅人。
200、狼と羊飼い。
201、兎たちとライオン。
202、雲雀とその雛。
203、狐とライオン。
204、鼬と鼠たち。
205、水浴びをする少年。
206、驢馬と狼。
207、神様の像を売る男。
208、狐と葡萄。
209、男と女房。
210、孔雀と女神ユノー。
(2010/04/07(Wed) 13:36)

[前の20件] [次の20件]