身が縮む思いがしましたが、しかしどうやら平静を保ち、
「はい」
と小さく返答いたしますと、父は小さな声で言いました。
「織田様の使い……いや、織田様の身辺からの正規の使いが重要な知らせを持って滝川様の元へ走り込むのと、ノノウや草達がそれを持ってここへ走り込んでくるのと、お前はどちらが速いと思う?」
私は暫し考えました。
父のことですから、本当にどちらが速いかを尋ねているのでは無い、というのは間違いないでしょう。私に聞くまでもなく、父の方が良く知っているはずなのです。
ではなぜそのようなことを聞くのか。
父の意向が図りかねました。
となれば、正直に答えるより他に術がありましょうか。
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見事な青鹿毛 でした。
「九寸 ある」
前田慶次郎殿はうっとりとした眼差しで鬣 を撫でられました。
皐月の晦日のことです。私は厩橋におりました。
呼び出されたのです。
その日の朝早くに届けられた萬屋の紙には、細くしなやかな文字で「源ざどの」と表書きされており、開けば、
「駒なるや いざ見に来たらむ ふるさとの 厩のはしにぞ 花と咲くらむ」
という一首と、「慶」の一文字がしたためられておりました。
私の傍らでは、垂氷 が好奇の目を輝かせておりました。
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