えぞおばけ列伝 | |
作家名:知里真志保(編・訳) アイヌの人々の間に伝わる「おばけ(妖怪)」の小話、及び、ちょっと艶っぽい伝説・民話など。 知里真志保(ちり ましほ、1909年2月24日 - 1961年6月9日)は、アイヌの言語学者。文学博士。専攻はアイヌ語学。姉は、『アイヌ神謡集』の著者・知里幸恵。 (2014/03/26(Wed) 21:55) | |
町のお姫さま | |
作家名:小川未明 「寂しいところ」が大好きだというお姫様。 どこでも良いから人のいないところで暮らしたいと言い出した。 人里離れた山奥までついて行った家臣達は退屈で仕方がないのだが、姫様ご本人は自慢の美声で歌ったり得意の楽器を奏でたりで、ちっとも寂しくないというからから困ったモノ。 ところがあるとき姫様は、自分より良い声で歌い、見事な腕前で琴を弾くその音を耳にする。 されど家臣達の耳には松風と鳥の囁きが聞こえるばかり。 しかし姫様は「ここはやかましくて仕方ない」と、今度は人家のない海辺へ住まいを移すことに。 家臣達はさらに退屈するのだが、そこでも姫様は歌い奏でてご満悦。 ところがある日 「毎晩星達が歌い鳴らすので、自分の音楽に身が入らない」 もっと寂しいところへ行きたいと言い出した。 辟易した知恵者の家臣は、姫様を賑やかな街へ連れ出した。 初めは驚いた姫様。でも、街では誰も姫様の音楽の「じゃま」をしないので、思う存分歌えると、自分の美声と名演奏を心に誇り、街で住み暮らしたのだとさ。 | |
お姫さまと乞食の女 | |
作家名:小川未明 古く寂しい城に住むお姫様は生まれてこの方城から出たことがない。 お姫様は小鳥一羽を友として、城の奥で暮らしていたが、常々世間を見て見たいと思っていた。 ある時お城に物乞いの女が迷い込む。 お姫様はその姿のみすぼらしさを怪しむが、よくよく見れば自分と同じ年頃の美しい娘であった。 物乞いの娘の身の上話を聞くうちに、お姫様の世間への興味は増して行く。 ついには物乞いと入れ替わって城外へ旅立つことにした。 お姫様は外の世界で得意の歌や演奏を生かして、旅芸人のような自由気ままな生活を始める。 そのころお姫様の身代わりにさせられた物乞いの娘はお城で心細く暮らしていた。 お姫様の飼い鳥に自らの身の不自由さを重ね見た娘は、小鳥を空に放つ。 放たれた鳥は故郷の南の港町へ戻った。 その町でかのお姫様が望郷の唄を歌っていたのだ。 お姫様は小鳥に導かれるように故郷の城へ戻る。 ところが城の様子が少々違っている。 事情を心得ていた侍女は泣きながらお姫様に告げた。 お殿様から宴席で歌うように言われた娘は、その素養がないことを言うこともできず、ついに井戸に身を……。 初出:雑誌『童話』 1922年(大正11)4月 |
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