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ここは【お姫様倶楽部Petit】の備忘録的リンク集【Petitの本棚】です

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[寓話]AESOP'S FABLES
作家名:イソップ
英訳者名:ジョージ・ファイラー・タウンゼント師(Reverend George Fyler Townsend)

イソップ寓話のタウンゼント版の英語原文。
一括表示ファイルで、リンク付き目次、アルファベット順の索引付き。
元のファイルの場所はこちら(プロジェクトグーテンベルグ内)。

hanama(ハナマタカシ)さんによる日本語訳版はこちら
(2011/06/16(Thu) 21:05)
[お伽噺・昔話]竹取物語
作家名:和田萬吉

いわゆる「かぐや姫」の物語を、国文学者の和田万吉が抄訳したもの。

以下あらすじ。
竹細工の老職人「讃岐の造麻呂」は「竹取の翁」と呼ばれていた。
翁はある日、いつも竹を取りに行く竹藪の中に、一本の光る竹を見付ける。
竹の中には三寸(9cm強)ほどの背丈の女の子がいた。
子のない翁は、自分が商売にしている竹の中から出てきた子供であるから、天が自分へ授けた子に違いないと考え、手に乗せて家へ連れ帰った。
妻の媼も喜んで、子供を竹籠に入れて育てることにした。
翌日から翁が竹藪に行くと、節の間に黄金の詰まった竹を度々見付けた。
このため、竹取の翁は次第に裕福になった。
子供は三ヶ月ほどで輝くような美しい娘となった。
娘の美しさは増し、家の中には暗い場が無く光に満ちた。
翁にとってこの娘を見ることが、心身の安らぎだった。
竹取の夫婦は娘に嫋竹(なよたけ:しなやかなタケのような)の赫映姫(かぐやひめ:揺れる光のような姫)と名前を付けると、成人の祝いに三日にわたって宴席を開いた。
娘の評判は広まり、多くの求婚者が現れる。
中でも熱心だったのが、石作皇子(架空の人物。モデルは「多治比嶋」か)、車持皇子(架空の人物。モデルは「藤原不比等」か)、右大臣・阿倍御主人(同名の実在の人物がモデル。635年-703年)、大納言・大伴御行(同名の実在の人物がモデル。646年-701年)、中納言・石上麻呂(同名の実在の人物がモデル。640年-717年)の5名。
翁が「自分も高齢だから、生きている内に結婚して欲しい」と願うと、娘は「私が欲しいと願った物を、間違いなく持ってきてくださる方となら、結婚する」と言う。
翁は、求婚者それぞれに娘の希望の品を告げる。
石作皇子には「天竺にある『佛の御石の鉢(釈迦が使っていた食器)』」
車持皇子には「東海の蓬莱山にある『根が銀、茎が金、実が白玉(真珠)の木の枝(蓬莱の玉の枝)』」
阿倍御主人には「唐土にある『火鼠の皮衣(火の中に住むとされる伝説の獣の皮で作った衣服)』」
大納言大伴御行には「龍の首にある『五色の玉(龍の頸の玉)』」
中納言石上麻呂には「燕の持っている『子安貝(燕の子安貝。タカラガイは巻き貝の一種で、卵形をしている)』」
皆難題であったが、五人はそれぞれに「工夫」をして、宝を持ってこようとする。
石造皇子は天竺に行ったフリをして、大和の国のある山寺の汚れた古い鉢を「佛の御石の鉢」と偽って持参する。しかし、本物ならば輝いているはず、と一蹴される。
車持皇子は一応船には乗ったものの、すぐに引き返し、彫金職人を手配して注文に似た枝を作らせ、持参。娘が驚いているところへ、職人が「代金を寄越せ」と乗り込んできたため、偽物とばれたうえに大恥をかかされる。
阿倍御主人は財力に物を言わせて、唐の商人から皮衣を買い付けて持参。美しい品であったが、火を付けるとあっと言う間に燃え尽き、贋作であると知れる。
大伴御行は海へ船を出し、自ら龍と戦おうと意気込んだものの、嵐の前にあっけなく難破。挙げ句、眼病にかかってしまい、二度と娘には近寄らなかった。
石上麻呂は自ら燕の巣から子安貝を取ろうと高所へのぼった。ところが手違いで地面へ落下し、その怪我が元で死んでしまった。
こういった噂を聞きつけた今上帝は、娘を宮中に参内させようとした。
しかし娘は、「宮中に上がるようなことがあれば、死んでしまう」と拒絶。
帝は狩りの帰りに翁の家へ寄ったフリをして、娘を連れ出そうとする。
ところが、乗り物に乗せようとすると、娘の姿が消えてしまう。
仕方が無くその日は諦めて帰った帝であったが、どうしても諦めきれない。手紙や和歌のやりとりをするが、思いは募るばかりだった。
暫くして、娘は月を見る度に悲しむようになった。
翁が訳を聞くと、娘は「自分は月の都の者で、ある因縁があって地上に来たのだが、八月の十五日には迎えの者が来て、天上へ帰らねばならない」と告白する。
翁は驚き、我が子同然に可愛がった娘を手放したくないと、帝に、一軍をもって月からの使者を捕らえて欲しいと願い出る。
帝は少将・高野大国を勅使とし、二千の武士をを送り出す。
武士千人は屋根の上で、千人は築地の上に、と、隙間なく翁の館を守らせた。
嫗が娘を抱きかかえて土蔵(塗籠:周囲を壁で塗り籠めた部屋)に籠もると、翁は鍵をかけて戸口に控える。
娘が「どんなに武装しても、鍵をかけても、月の人々の前に出れば戦う気は失せ、戸は全部開いてしまう」と言えば、翁は「どんなことがあっても追い返してやる」と言いつつ、共に嘆き悲しむ。
夜中、突然空が明るくなり、雲に乗った人々が降りてきた。
武士達は戦おうとするも手足に力が入らない。
雲の中から車が一つ飛来し、総領とおぼしき人物が翁に「姫は罪を犯したので下界に降りていたのだが、その罪が消えたので迎えに来た」と告げる。
翁が応じずにいると、件の車が館に近付く。固く閉めたはずの扉は悉く開き、土蔵の中から娘がすーっと出てくる。
翁媼が引き留めようとすると、娘は手紙と薬壺(地上の人々よりも寿命の長い月の人の薬であり、不老不死の妙薬)を渡し、月の人々が携えてきた天の羽衣(纏うと「物思い」が無くなる)を着、車に乗ってしまう。
車が空高く上ってゆくのを、翁と媼は泣いて見送る。
勅使がこの出来事を帝に復命し、娘から帝に宛てた手紙と、薬壺を献上する。
帝にとって、娘がいない世では、不死の薬など不要であった。
そこで一番天に近い山が駿河にあるというので、使者を立てて(沢山の武士を引き連れさせ)、その頂上で薬を焚いてしまった。
こうしてこの山は不死の薬を焚いたので「不死の山」(あるいは多くの武士を連れていったことから『士(もののふ)の富む山』だというので「富士の山」)と呼ばれることになった。
(2011/05/16(Mon) 16:19)
[歴史・史料関連]魏志倭人傳(原文)
作家名:陳壽(陳寿)

正式な名前は「『三国志』魏書東夷伝倭人条」。
「三国志」の中の「魏の記録」の中にある、「東の方の異民族の記録」の中の「倭人の項目」であり、全文で2000余文字。
成立は3世紀末(280年-290年間)。
陳寿、字は承祚。233年-297年。巴西郡安漢の人。三国時代の蜀漢と西晋に仕えた官僚で、『正史・三国志』の著者。

このファイルは、改行無しの原文のみを掲載。
(2011/03/09(Wed) 22:48)
[歴史・史料関連]魏志倭人傳(漢文訓読文)
作家名:陳壽(陳寿)

正式な名前は「『三国志』魏書東夷伝倭人条」。
「三国志」の中の「魏の記録」の中にある、「東の方の異民族の記録」の中の「倭人の項目」であり、全文で2000余文字。
成立は3世紀末(280年-290年間)。
陳寿、字は承祚。233年-297年。巴西郡安漢の人。三国時代の蜀漢と西晋に仕えた官僚で、『正史・三国志』の著者。

このファイルは、原文の書き下し文(訓読文)のみを掲載。
(2011/03/09(Wed) 22:46)
[歴史・史料関連]魏志倭人傳(原文と訓読文と訳文の対照)
作家名:陳壽(陳寿)

正式な名前は「『三国志』魏書東夷伝倭人条」。
「三国志」の中の「魏の記録」の中にある、「東の方の異民族の記録」の中の「倭人の項目」であり、全文で2000余文字。
成立は3世紀末(280年-290年間)。
陳寿、字は承祚。233年-297年。巴西郡安漢の人。三国時代の蜀漢と西晋に仕えた官僚で、『正史・三国志』の著者。

このファイルでは、原文と書き下し文(訓読文)に、精一杯の訳文を付する。
(2011/03/09(Wed) 22:40)
[その他小説]薤露行(かいろこう)
作家名:夏目漱石
初出:明治38年11月「中央公論」

アーサー王伝説を元にした短編。5章構成。
アーサー王と騎士達は北方で行われる槍試合に出るためカメロット(キャメロット)の居城を後にする。
留守を守る王妃ギニヴィア(グィネヴィア/ギネビア)の元へ、怪我を理由に王達と別行動をしたランスロットが現れる。
二人は道ならぬ恋をする仲だった。
ギニヴィアが不吉な夢を見たと語るのを聞いたランスロットは、不吉を感じながらも、王の後を追って旅立つ。(夢)
シャロットの台(うてな:高殿)に住まい機を織る女は、その目で外を見れば呪われるため、鉄鏡越しに世の中を見ている。
その鏡に、北へ向かう騎士が映る。女はそれがランスロット卿と認め、その名を呼ぶ。
気配を感じ取ったランスロットの目と、思わず窓から顔を出した女の視線は交錯するが、ランスロットはその場から急ぎ立ち去った。
砕けた鏡の鉄片と、千切れた織物の糸とが舞い上がり、蜘蛛の糸のように女の体にまとわりつく。女はランスロットを呪う言葉を叫び、死ぬ。(鏡)
アストラットに立ち寄ったランスロット。
馬上試合に遅れたのを恥た彼は、正体を隠して試合に出ようと考え、城主の息子から武具を借り受ける。
城主の娘エレーンは彼に恋心を抱く。父や兄は諦めさせようとするが、エレーンは思い断ちがたく、騎士元へ行くと、赤い布を贈り、愛の証として身につけて欲しいと懇願する。
この布と借りた武具によってによって正体を隠せると考えたランスロットは、この申し出を受ける。
ランスロットはエレーンに「戻るまで楯を与って欲しい」と告げ、試合へ向かう。(袖)
王と騎士達がカメロットに帰還する。しかしランスロットの姿はない。
ランスロットが「美しき少女」から贈られた赤い布を身につけ戦っていたとアーサーに聞かされたギニヴィアは、嫉妬の念に駆られる。
そこへモードレッド卿が現れ、王の前でランスロットとギニヴィアの不義を告発する。(罪)
馬上試合で傷を負ったランスロットは、熱に浮かされて姿を消す。
アストラットのエレーンは戻ってこないランスロットに焦がれるあまり、衰弱して死ぬ。
遺言により亡骸はランスロットへの文と数多の花々と共に小舟に乗せられ、川に流される。
舟はカメロットの水門で止まり、城内から人々が集まり来る。
エレーンの持っていた文を読んだギニヴィアは、彼女が「美しき少女」であると気付き、涙を流した。(舟)

ちなみにこの作品のタイトルは、漱石自身の解説によれば、
「題は古楽府こがふ中にある名の由に候。ご承知の通り『人生は薤上の露の如くかわきやすし』と申す語より来り候。無論音にてカイロとよむつもりに候」
だとか。(2011/03/08(Tue) 20:01)
[神話・伝承]シャロットの妖姫
作家名:アルフレッド・テニソン Alfred Tennyson
訳者名:坪内逍遙
アルフレッド・テニスン(1809〜1892)の"The Lady of Shalott"(1832、改訂版1842)を、明治期に坪内逍遥(1859〜1935)翻訳したもの。
「The Lady of Shalott」というタイトルを逍遙先生は「シャロットの妖姫」と訳しましたが、他には「シャロット(シャーロット)の乙女」「シャロットの女」「シャロットの姫」などとも。
アーサー王と円卓の騎士の挿話をモチーフにした詩。

島の塔の中で機を織る一人の娘。彼女にはキャメロット(アーサー王の領地)をその目で見ると何か良くないことが起きる、という呪いがかけられている。
娘は鏡写しになった外界を眺め、その景色を織物に描いていた。
そんな寂しい暮らしを嘆いていたある時、鏡に円卓の騎士の一人ランスロット卿が映り込んだ。
その姿に一目惚れした娘、矢も楯もたまらず窓から外を見る。
途端、彼女が織っていた布が独りでに広がり、糸が乱れ舞い、鏡が割れた。
呪いが掛かったと娘のは、塔から外へと彷徨いで、川面に浮かぶ小舟に乗り込む。
ランスロットのいるキャメロットを目指し、船は進む。
娘は小舟の中に横たわって賛美歌を口ずさむが、キャメロットにたどり着く前に息絶えてしまう。
キャメロットの人々は娘の亡骸を見て訝しがり、畏れる者さえいた。
ただランスロット卿だけが、彼女の冥福を祈るのだった。
(2011/03/08(Tue) 17:40)
[その他小説]エリザベスとエセックス(ELIZABETH AND ESSEX)
作家名:リットン・ストレチー Lytton Strachey
訳者名:片岡鉄兵
初出:「エリザベスとエセックス」富士出版社、1941(昭和16)年8月

エリザベスは「エリザベスT世(Elizabeth I, 1533-1603)」のこと、エセックスは「エセックス伯ロバート・デヴルー(Robert Devereux, Earl of Essex,1566- 1601)のこと。
エリザベス1世の寵臣(愛人)レスター伯ロバート・ダドリーは、エセックス伯ウォルター・デヴルーの未亡人レティス・ノリスと再婚。
レティスには前夫との間に一子ロバートがあった。
義父ダドリーは次第にエリザベスから疎まれるようになっていったが、入れ替わるようにエセックス伯は寵愛されるようになる。
53歳の老処女王と、20歳の若い貴族の「愛」と「死」の物語。
一応「伝記小説」の範疇にはいる、と思われ。

ちなみに
福田逸訳の版には「王冠と恋」という副題が付いている。
エリザベスとエセックス―王冠と恋 (中公文庫)(2011/03/08(Tue) 17:03)
[文学論など]文芸は進化するか、その他
作家名:平林初之輔
初出:「新潮 第二七年第六号」1930(昭和5)年6月号

ごく短い文学論のようなもの。以下の六編からなる。

一 文芸は進化するか?
二 文学作品と広告
三 課題小説
四 小説の危機
五 ヴァン・ダインの探偵小説論
六 新作家輩出時代

五章にて探偵小説を書くときの二十則に言及。

平林初之輔(ひらばやし はつのすけ、1892年11月8日 - 1931年6月15日)
作家・推理作家・文芸評論家・プロレタリア文学運動の理論家。
ヴァン=ダインなどの作品を翻訳して日本に紹介した。
(2010/12/14(Tue) 17:59)
[大衆文学]神州纐纈城
作家名:国枝史郎
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武田信玄の寵臣・土屋庄三郎は、夜桜見物の折、怪しげな布売りに古代中国で人血で染めたという妖しい深紅の布「纐纈布」を売りつけられる。
その纐纈布に行方知れずの父・土屋庄八郎昌猛の名を幻視した庄三郎は、掟を破って国抜け。富士の本栖湖にあるという「水城」へ向かう。

以下、激しくネタバレな粗筋。

途中庄三郎は、三合目陶器師を名乗る賊と出会う。美しい面をしているが心根は残忍。道行く人を襲い殺しては、竈で蒸し焼きにしている。

陶器師の刃を避けた庄三郎は、富士の裾野隠れ住む上杉謙信の旧家臣・直江蔵人と出会う。蔵人世から見捨てられた病人達を治療しているのだ。

更に先を行けば、そこは樹海の奥に忽然と現れた「富士教団神秘境」だった。
教祖の光明優婆塞の人物に惹かれた庄三郎は、教団の幕屋に住み着く。

一方、庄三郎出奔を知った甲府では、信玄は高坂弾正の妾腹の子で十四歳という若さの「甚太郎」に庄三郎追跡の命を下す。
高坂甚太郎は鳥追いに化け、竹竿を背負って出立する。
武田家の割符を持った甚太郎は甲州を気ままに探索する。
やがて青木原に迷い込んだ彼は三合目陶器師に出会う。
竿を槍として使い、陶器師を翻弄した甚太郎は、彼から庄三郎の行方を聞き出し、本栖湖へ向かう。

甚太郎との戦いで自分の顔の浅ましさを悟った陶器師は、富士の人穴に隠れ住む面作師・月子の元へ向かう。
月子は裏家業として自分の過去を捨てたい者達に「造顔の術」を施していた。
元は北条内記という名の武士だった陶器師は、元の醜い顔を彼女に作り替えて貰っていたのだ。
北条内記の妻は、月子は「本当の悪人」を面の上に再現するため、その顔を持つ物に出会うことを望んでいた。
陶器師は纐纈城の城主こそ本当の悪人と言う。
月子は纐纈城の城主に合うことを願いつつ、陶器師を改心させようと「富士教団」へ行くよう促す。

そのころ、甚太郎は「水城」の手の物に騙され「水城」すなわち「纐纈城」に捕らわれてしまう。

纐纈城では拉致してきた人々を「賓客」として歓待し、太らせていた。やがてくじが引かれ、選ばれた「賓客」が地下の工場へ運ばれる。彼等の血が「纐纈布」を染める染料となるのだ。

纐纈城の城主は、鉛色の中将の仮面と、人血で染めた纐纈布の鎧直垂をまとった謎の人物だった。彼は奇病「奔馬性癩患」に犯されており、変容した姿を仮面と纐纈布で隠していた。

「奔馬性癩患」とは強力な感染力を持つ伝染病で、患者に触れただけで感染し、病状は一瞬にして進行。事に纐纈城の城主の素顔を見た物は、その恐ろしさも相まって、即死するという。

光明優婆塞は本栖湖の湖畔にたたずみ、その対岸にある「纐纈城」に呼びかける。
纐纈城の城主は彼の兄だった。
武に秀でていたが容姿の醜い兄は、己の美しい妻が弟・主水と密通しているのではないかと疑い、妻と一子・庄三郎を残して出奔したのだ。
そう、光明優婆塞は庄三郎の叔父・土屋主水昌季。纐纈城城主は父・土屋庄八郎昌猛なのだ。

自分の力では信者も兄も救えぬと思い極めた光明優婆塞は、教団から姿を消す。
象徴を失った教団は混乱し、「纐纈布」を所持していた庄三郎を敵の間者と思いこんで集団暴行。半死半生の彼を船に乗せ、本栖湖へ流してしまう。

他方、越後は春日山。
上杉謙信の元に塚原卜伝が訪れ、秘薬「五臓丸」を持ち込む。万病に効く薬であるが、その原料は生きた人間の五臓。卜伝はこの「悪魔の薬」は越後流の製造法と見て、上杉縁の者が作っているに違いないとして、謙信の元を訪れたのだった。

謙信の旧臣のうちより直江蔵人に目星を付けた卜伝は、彼を捜して富士へ向かう。
はたして、蔵人はまだ息のある不治の病人から五臓を取り出し、五臓丸を製造していた。

その頃纐纈城では、城主が甲府から来た賓客・甚太郎の話、そして彼の口から出た土屋庄三郎の名を聞き、望郷の念に駆られていた。

纐纈城主はその念押さえきれず、富士教団の船に乗った半死半生の者をその顔も見ずに「賓客」と遇するよう家臣に命ずると、城の外へ出た。

「甲府へ」
真っ赤な「纐纈布」を纏った纐纈城主は、炎の柱のような風体で
「故郷の人。……祝福あれ!」
行く先々に「奔馬性癩患」をまき散らしながら、
「なつかしい故郷! 恋しい甲府! 俺の祝福を受けてくれ!」
躑躅ヶ崎の城下を進む。

人穴では月子が面を作っている。そこへふらりと現れたのは、纐纈城を脱出した高坂甚太郎。美しい月子と過ごした甚太郎は、庄三郎追跡の主命を放棄して、己も出奔しようと、人穴を出て行く。入れ替わりにやって来たのは、伴源之丞という若侍と、園という美女。北条内記という女敵から逃れるため、美しい顔を醜く変えて欲しいと願いった。月子の施術によって、醜い老人・老女の姿となった二人は、甲府へ向かった。
甲府は「奔馬性癩患」により混乱に陥っていた。
そこに現れたのは、直江蔵人と塚原卜伝。そして三合目陶器師。
切り結ぶ卜伝と陶器師……。

放浪乞食となった光明優婆塞が「奔馬性癩患」に罹った人々を癒し、騒ぎは収束へ向かっていた。

そして纐纈城主は、荒れた小さな宮の中に横たわり、己の半生を振り返っていた……。
(未完)

初出:「苦楽」大正14年1月〜大正15年10月連載(2010/11/25(Thu) 20:12)
[戯曲]ロミオとヂュリエット
ロミオとヂュリエット
作家名:シェークスピヤ(シェイクスピア)
訳者名:坪内逍遙

翻訳の初版:ロミオとジュリエット 早稲田大学出版部, 明43.9?

イングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアによる戯曲。
初演年度については諸説あるが、概ね1595年前後と言われている。

(このテクストは「台本」形式です)

以下あらすじ。

舞台は14世紀のイタリアの都市ヴェローナ(※(濁点付き片仮名ヱ、1-7-84)ローナ)。
モンタギュー家とキャピュレット家は血で血を洗う抗争に明け暮れている。
ある日、ロザライン(ローザライン)という美女に懸想しているモンタギュー家の若者ロミオ(ローミオー/ロメオ)は、彼女に会うためにキャピュレット家のパーティに忍び込んだ。
そこで彼はキャピュレット家の令嬢ジュリエット(ヂュリエット/ジウリエッタ)に一目惚れする。ジュリエットもまた彼に一目惚れした。
互いの家は仇同士。結婚は許されない。
ロミオは旧知の修道士ロレンスに相談。ロレンスはこの二人の若者によってモンタギュー家とキャピュレット家の不和が解消できるかも知れないと考え、彼等の結婚を取り持つことにする。
しかし運悪しく、ロミオは街頭で両家の争いに巻き込まれ、親友・マキューシオ(マーキューシオー)を殺され、その仕返しにキャピュレット夫人の甥でジュリエットの従兄であるティボルト(チッバルト)を殺してしまう。
ヴェローナの大公エスカラスは、ロミオを追放の罪に処する。
ロミオは、修道士に相談した。修道士ロレンスは、ロミオには減刑の嘆願をするからしばらくは温和しくし、追放先から必ず連絡を寄越すように諭す。
彼が旅立ったあと、大公エスカラスの親戚のパリス(パーリス)との縁談を持ちかけられたジュリエットも修道士に相談を持ちかけた。
ロミオ以外の男と結婚するなら生きたまま墓にはいるとまで思い詰めている彼女に、ロレンスは仮死状態となる薬を渡した。
死んだふりをして埋葬され、のちにロミオと共に墓を出て、共に町の外で暮らすように、と。
ジュリエットは修道士の案に賛成し、実行する。
修道士はロミオにこの計略を伝えるべく使者を立てる。
しかし、名家キャピュレットの令嬢の「婚礼直前の死」というスキャンダラスで悲しい話は、使者の足よりも早くロミオの耳に入ってしまった。
真実を知らないロミオは、ジュリエットの「亡骸」の前で毒を呷って死ぬ。
目覚めたジュリエットは、死んだロミオの短剣をもって自害した。
総てが終わり、総てを知った両家の者達は、哀しみの中、和解したのだった。
(2010/11/15(Mon) 18:13)
[文学論など]意慾的創作文章の形式と方法
作家名:坂口安吾

安吾先生による、文章読本的な短めの評論。
 小説の文章を他の文章から区別する特徴は、小説のもつ独特の文章ではない。なぜなら小説に独特な文章といふものは存在しないからである。
(中略)
 要するに小説は明快適切でなければならないものであるが、小説の主体を明快適切ならしめるためには、時として各個の文章は晦渋化を必要されることもありうるのだ。そして描写に故意の歪みを要するところに――換言すれば、ある角度を通して眺め、表はすところに――小説の文章の特殊性もあるのである。
 なぜなら、小説は事体をありのままに説明することではない。小説は描かれた作品のほかに別の実体があるわけのものではない。小説はそれ自体が創造された実体だからである。そこから小説の文章の特殊性も生まれてくる。
(中略)
 作家が全てを語ることは不可能である。我々の生活を満してゐる無数のつまらぬ出来事を一々列挙するとせば、毎日少くも一巻を要すであらう。
 そこで選択が必要となる。そして、これだけの理由でも「全き真実」「全き写真」といふことは意味をなさなくなるのである。
(中略)
 作家の精神はありのままに事物を写さうとする白紙ではないのである。複雑――むしろ一生の歴史と、それを以てして尚解き得なかつた幾多の迷路さへ含んでゐる。そしてこの尨大な複雑が、いはば一つの意力となつて凝縮したところに漸く作家の出発があるのである。言葉を芸術ならしむるものは、言葉でもなく知識でもなく、一に精神によるものであるが、併し精神を精神として論ずることは芸術を説明する鍵とならない。
(中略)
 勝れた作家は各々の角度、各々の通路を持つてゐる。通路は山と海ほどの激しい相違があるけれども到達する処は等しい。同じ人物をピエルとシャートフの相違で描いても、要するに全貌を現したあとでは同じものになる。モオパッサンはピエルの方法でしかシャートフが描けないのである。
(中略)
 今我々は一人物の外貌を描写しようとしてゐる。特徴のある顔、甚だ表情のある手、それよりも短い身長と、しかも奇妙にゴツゴツした動きが特に目をひき易い。しかも猫のやうな声、時々まるで変化する眼の具合、これらを精密に描いたなら、読者はその外貌を読んだだけで、この男の性格や心の底を見抜くことが出来るほどだ。そこで我々はこの人物の外貌を精細に描写したいばかりに、情熱でウズウズしてゐる。併し長い紙数を費して一気にこの男の外貌の全部を描いてゐたら、読者は却つて退屈を感じ、そのために混雑した不明瞭な印象を受けるばかりで、大切な核心を読み逃してしまふであらう。
(中略)
 小説の文章は書くべき事柄を完膚なく書きつくさねばならないのである。即ち、作家の角度から選択され一旦書くべく算出された事柄は、あくまで完膚なく書きつくさねばならないのだ。たまたま文章の調子に迷ひ右を左と書きつくらうやうな過ちは犯してならないことである。
(後略)
初出:「日本現代文章講座 ※(II)―方法篇」厚生閣 1934(昭和9)年10月13日発行
(2010/11/04(Thu) 20:15)
[フェアリーテール]グリム童話「白雪姫」
原題:Snow White and the Seven Dwarfs
作家名:グリム兄弟
ヤーコプ・ルードヴィッヒ・カール・グリム
ヴィルヘルム・カール・グリム
英訳:Margaret Hunt
英語訳からの重訳:松本博則

「雪のように白く、血のように赤く、黒檀の木のように黒い髪をした子がほしい」
王妃(この版では「女王」)の願いは叶い、間もなく女の子が生まれ「白雪姫」と名付けられたが、王妃は死んでしまう。
程なく王は後添えの王妃を迎える。新しい王妃は美しいが高慢だった。
王妃は問えば答える不思議な鏡を持っていた。鏡は、
「女王さまが一番うつくしい」
と答えたので、王妃は大変満足していた。
しかし白雪姫が7歳になると、正直な鏡は
「白雪姫の方が何千倍もうつくしい」
と答えるようになった。
白雪姫を妬んだ王妃は、狩人に姫を殺すよう命じる。狩人は姫を哀れみ、彼女を殺さずに逃がした。
森を彷徨った白雪姫は七人の鉱山夫の小人(ドワーフ)の家へたどり着く。
姫から訳を聞いた小人たちは、家事をする代わりに家に置くことにする。
その頃、鏡の答えから白雪姫が生きていると知った王妃の恨みの念は強まった。
小人たちが仕事に出ている間、留守居をしていた白雪姫の元に、物売りの老婆に変装した王妃が現れる。
姫は老婆が王妃とは気付かず美しい紐を買う。王妃は親切の振りをして紐で白雪姫の胴を締め上げて窒息させ、逃げた。
帰宅した小人たちが紐を切ると、姫は息を吹き返した。
姫が死んでいないことを知った王妃は、また物売りに変装して、毒を仕込んだ櫛を姫に売りつける。
櫛で髪をすくと毒が回って姫は倒れ込んだ。
王妃が逃げた直後に小人たちが戻り、倒れている姫の頭から櫛を取ると、姫は再び息を吹き返した。
小人たちは姫に誰が来ても戸を開けてはならないと強く言い聞かせた。
鏡の答えから白雪姫が生きていると知った王妃は大いに怒り、三度変装して小人の家へ向かう。
農婦に変装した王妃に林檎を勧められた姫は、最初は拒絶したが、王妃が林檎を二つに分け、一方を食べて無事であったことに安心し、残りを食べる。
林檎は半分だけ毒が仕込まれており、一口囓った途端に、姫は意識を失って倒れる。
王妃は急ぎ城に戻り、鏡が白雪姫の名を出さぬのを確認すると、姫が死んだものと思い、安堵する。
戻ってきた小人たちは、倒れている白雪姫を介抱するが、意識は戻らない。
小人たちは嘆き悲しんだが、生きているように美しい姫を埋葬するのに忍びなく、ガラスの棺を作って山の頂に安置する。
暫く過ぎた頃、近隣の国の王子がこの地を訪れる。王子はガラスの棺とその中の白雪姫を一目見るなり心を奪われ、小人たち頼み込んで姫を贈ってもらう。
王子は召使いに棺を担がせ運ばせた。すると召使いが躓き、その拍子に喉から毒林檎の欠片が取れ、姫は息を吹き返す。
王子は大変喜び、事の次第を説明して、白雪姫に求婚した。
王子の国に着いた二人は、結婚式を挙げることになった。
この式に王妃も招かれた。式に出てた王妃は、姫に対して行った罪の報いとして、焼かれた鉄の靴を履かされたのだった。
(2010/11/04(Thu) 19:35)
[推理・探偵小説]まだらのひも(まだらの紐)
原題:The Adventure of the Speckled Band
作家名:サー・アーサー・コナン・ドイル
初出:「ストランド・マガジン」1892年2月
訳者名:海野十三/大久保ゆう改訳

1883年4月初め。
ヘレンとジュリアのストーナ姉妹の亡母の遺産は、義父である医師ロイロット博士に管理されていた。
遺産は遺言により姉妹が結婚する時に半分ずつ相続することになっていた。
しかしジュリアが結婚直前に謎の死を遂げる。
彼女は死の間際に「まだらの紐(Speckled Band)」という言葉を遺した。
ダイイングメッセージから、近くで野営していたロマのバンド(band)が連想されたが、証拠はなく、事件は迷宮入りした。
2年後、ヘレンは屋敷の改築のために以前ジュリアの使っていた部屋を使用することとなった。
部屋を移ったその夜、静けさの中で不穏な物音を聞いたヘレンは、不安に駆られ、ホームズに事件の究明を依頼した。
(2010/11/04(Thu) 14:47)
[推理・探偵小説]技師の親指
原題:The Adventure of the Engineer's Thumb
作家名:サー・アーサー・コナン・ドイル
初出:「ストランド・マガジン」1892年3月号
訳者名:coderati

開業したワトソン先生の所に水力技師ヴィクター・ハザリーが治療に訪れる。
ハザリーは、ドイツ人のライサンダー・スターク大佐から水圧機の修理を高報酬で依頼されたが、依頼内容に不自然さを感じて依頼主を問い詰めたところ殺されそうになり、逃げようとして親指を切断された、という。
興味を抱いたワトソンは、彼をベーカー街221Bに連れて行き、ホームズと共に詳しい話を聞くことにした。
(2010/11/04(Thu) 14:31)
[文学論など]小説作法
作家名:永井荷風

永井荷風先生が「税金の支払い分の稿料のために」と冗談めかしつつ書いた小説の書き方。
短文だが、鋭い。
初学者もし小説にでも書いて見たらばと思ひつく事ありたらばまづその思ふがままにすらすらと書いて見るがよし。しかして後添刪てんさく推敲すいこうしてまづ短篇小説十篇長篇小説二篇ほどは小手調こてしらべ筆ならしと思ひて公にするなかれ。そのうち自分にても一番よしと思ふものを取り丁寧に清書してもし私淑ししゅくする先輩あらばつてを求めてその人のもとに至り教を乞ふべし。菓子折なぞは持参するに及ばず。唯草稿を丁寧に清書して教を乞ふ事礼儀の第一と心得べし。小説のことなればことごと楷書かいしょにて書くにも及ばじ、草行そうぎょうの書体をまじふるも苦しからねど好加減いいかげんくずかたは以てのほかなり。疑しき所は『草訣弁疑そうけつべんぎ』等の書についてみずから正せ。
(2010/05/10(Mon) 20:35)
[その他文献]タウンゼント版イソップ寓話集について
イソップ寓話の標準英語版の翻訳者 ジョージ・ファイラー・タウンゼント師と、タウンゼント版イソップ寓話について、ウィキペディアの記述と、和訳をなさったhanama氏のウェブサイトの記述を参考に、簡易にまとめる。(2010/04/07(Wed) 14:19)
[寓話]タウンゼント版イソップ寓話集(一括表示版)
作家名:イソップ
英訳者名:ジョージ・ファイラー・タウンゼント師(Reverend George Fyler Townsend)
日本語翻訳者名:hanama(ハナマタカシ)

1話から312話まで一括表示。
データが大きいので、表示に時間がかかるかも知れません。
(2010/04/07(Wed) 14:13)
[寓話]タウンゼント版イソップ寓話集 271-312 話
作家名:イソップ
英訳者名:ジョージ・ファイラー・タウンゼント師(Reverend George Fyler Townsend)
日本語翻訳者名:hanama(ハナマタカシ)

イソップ寓話の内、以下の41編を収録。

271、真理と旅人。
272、人殺し。
273、ライオンと狐。
274、ライオンと鷲。
275、メンドリと燕。
276、道化と田舎もの。
277、烏と蛇。
278、猟師と馬乗り。
279、王子と絵のライオン。
280、ネコとヴィーナス。
281、牝ヤギたちのあご髭。
282、ラクダとアラブ人
283、粉屋と息子とロバ
284、カラスとヒツジ。
285、キツネとイバラ。
286、オオカミとライオン。
287、イヌとハマグリ。
288、アリとハト。
289、ウズラと鳥刺し。
290、ノミと人。
291、盗賊とオンドリ。
292、イヌと料理人。
293、旅人とプラタナス。
294、ウサギたちとカエルたち。
295、ライオンとジュピターとゾウ。
296、子ヒツジとオオカミ。
297、金持ちと皮なめし職人。
298、難破した男と海。
299、二匹のラバと盗賊。
300、マムシと鑢。
301、ライオンとヒツジ飼い。
302、ラクダとジュピター。
303、ヒョウとヒツジ飼いたち。
304、ロバと軍馬。
305、ワシとワシを捕まえた男。
306、禿頭とアブ。
307、オリーブの木と、イチジクの木。
308、ワシとトビ。
309、ロバとロバ追い。
310、ツグミと鳥刺し。
311、バラとアマランス。
312、太陽に文句を言うカエル。
(2010/04/07(Wed) 13:55)
[寓話]タウンゼント版イソップ寓話集 241-270 話
作家名:イソップ
英訳者名:ジョージ・ファイラー・タウンゼント師(Reverend George Fyler Townsend)
日本語翻訳者名:hanama(ハナマタカシ)

イソップ寓話の内、以下の30編を収録。

241、狐とライオン。
242、フクロウと鳥たち。
243、捕らえられたラッパ兵。
244、ライオンの皮をかぶった驢馬。
245、雀と兎。
246、ノミと牡牛。
247、善い者と悪い者たち。
248、鳩と烏。
249、マーキュリーと樵。
250、鷲と烏。
251、狐と鶴。
252、ジュピターとネプチューンとミネルヴァとモーモス。
253、鷲と狐。
254、人とサテュロ。
255、驢馬と買い手。
256、二つの袋。
257、泉の鹿。
258、烏と狐。
259、父親を埋葬するヒバリ。
260、蚊と牡牛。
261、母犬とその子。
262、犬と皮。
263、羊飼いと羊。
264、セミとフクロウ。
265、猿とラクダ。
266、農夫とリンゴの木。
267、二人の兵士と泥棒。
268、ご神木。
269、母親と狼。
270、驢馬と馬。
(2010/04/07(Wed) 13:48)

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