Encoding of this website is Japanese(Shift_JIS). Japanese fonts required to view this website.

ここは【お姫様倶楽部Petit】の備忘録的リンク集【Petitの本棚】です

ワード検索
キーワード: AND OR
検索結果:163
[児童文学・童話]あのときの王子くん
作家名:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ Antoine de Saint-Exupery
翻訳者:大久保ゆう
翻訳の底本:Antoine de Saint-Exupery (1943) 「Le Petit Prince」
フランス語原題:Le Petit Prince、英語: The Little Prince

日本では『星の王子さま』のタイトルで知られているが、これはは岩波書店版の翻訳者であるフランス文学者の内藤濯によるもの。
原題を直訳すれば『小さい王子』あるいは『小さい大公』程度の意味になる。

「大切なものは、目に見えない (Le plus important est invisible)」

パイロットである「ぼく」は、飛行機の故障のためにサハラ砂漠に不時着する。水も食料も乏しく、周囲には誰もいない。
夜が明けて「ぼく」は小さな少年と出会う。彼は「家ほの大きさで、三つの火山と、成長して根を張れば小惑星を破壊して仕舞うであろうバオバブの芽、そして一輪きりの薔薇が咲いている小惑星からやってきた王子」だった。
唯一の話し相手であった薔薇と喧嘩をして、自分の星を出た王子は、様々な星を回り、ヘンテコな大人達と出会い、そして地球にやってきたのだ。
「ぼく」が飛行機の修理に手を焼いている間、王子はその旅の話を語って聞かせてくれた。
やがて「ぼく」の飛行機は直り、同じ頃、王子も自分の星へ帰る方法を知る。
その方法で王子が自分の星へ帰ることができたことを確信した「ぼく」は、夜空を見上げて王子のことを想うのだった。
(2021/04/06(Tue) 11:01)
[児童文学・童話]愛ちやんの夢物語
作家名:レウィス、キァロル(ルイス・キャロル/Lewis Carroll)
翻訳者:丸山英觀(丸山英観)

初出:「愛ちやんの夢物語」内外出版協會 1910(明治43)年2月1日発行

不思議の国のアリス(ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND あるいは ALICE IN WONDERLAND)の日本語訳。(完訳)

一番の特徴は、アリスの名前が日本語的に「愛ちゃん」と変更されていること。
そのほかに、飼猫のダイナは「玉ちゃん」に、チシャネコは「朝鮮猫」に、クロッケー(クローケー)は「鞠投げ」に、トカゲのビルは「甚公」に、フラミンゴは「紅鶴(和名)」に、タルトが「栗饅頭」に、ハートのジャックが「心臓《ハート》の軍人《ネーブ》」なっているのに、グリフォンは「グリフォン」なのは、わかりやすく置き換えられるものが思いつかなかったからだろうか。
(2018/07/06(Fri) 16:17)
[その他文献]字幕閑話
作家名:秘田余四郎

映画字幕翻訳家である作者の元に届けられる「困ったファンレター」に関する、ごく短い随筆。
秘田余四郎(ひめだ よしろう、1908年10月15日 - 1967年9月18日)は、翻訳家(仏文学)、小説家。本名・姫田嘉男。
(2018/05/30(Wed) 15:39)
[その他文献]サンタクロースはいるんだ
原著名:YES, VIRGINIA, THERE IS A SANTA CLAUS
作者名:ニューヨーク・サン紙社説(担当:フランシス・ファーセラス・チャーチ) The New York Sun (written by Francis Pharcellus Church)
翻訳者名:大久保ゆう

編集者さま: 私は8歳です。
私の何人かの友だちはサンタクロースはいないと言います。
パパは「サン新聞が言うことならそのとおりだ」と言います。
どうか私に本当のことを教えてください; サンタクロースはいるのでしょうか?
[歴史・史料関連]拷問の話《ごうもんのはなし》
作者名:岡本綺堂
初出:「新小説」1924(大正13)年2月号

劇作家・小説家である岡本綺堂の随筆。

司法制度としての拷問の話。

時代劇などでは「厳しいお調べ=拷問」のように描かれることが多いが、実際のところ、江戸時代の奉行所では「拷問による自白」は「奉行所の能力不足」と取られ、信用問題に発展する恐れもあり、極力拷問を避ける方針だった。
大阪を所払いになった窃盗の常習犯・吉五郎は、江戸に流れ着くと仲間を集め、日本橋人形町で鼈甲の櫛四枚を盗んで売りさばいた。
逮捕されたの仲間は自白に及んだが、吉五郎は頑なに否定する。
自白が取れなければ裁きが出来ない。奉行所は苦渋の選択をし、吉五郎に対して拷問が行われることとなる。
石抱き、鞭打ちといった通常の拷問にあっても、無実を訴える吉五郎。更に厳しい海老責め、釣し責めも行われたが、それでも口を割らない。
牢屋では他の囚人達が彼を英雄のように称えて、(当然非合法の)衣食の差し入れが行われ、拷問を受けて半死半生の筈の吉五郎が、丸々と健康そうに太る程であった。
奉行所は最後の手段として「状況証拠による犯罪認定」すなわち察斗詰《さとづめ》の裁定を行い、吉五郎を死罪と断じた。
処刑の日、吉五郎に牢内の囚人達から新しい麻の帷子、襦袢、帯、白足袋が贈られた。それを纏って刑場へ引き立てられる彼の背に、囚人達は「日本一!」と賛美の声を浴びせかけたのだった。
(2015/10/15(Thu) 20:17)
[戯曲]眞夏の夜の夢(真夏の夜の夢)旧字旧仮名
真夏の夜の夢
原題:A Midsummer Night's Dream
作家名:シェークスピヤ(シェイクスピア)
訳者名:坪内逍遙

イングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアによる戯曲。
(このテクストは「台本」形式です)
以下あらすじ。

アセンズ(アテナイ)公シーシアス(テセウス)とアマゾン国のヒッポリタ(ヒッポリュテ)との結婚式が間近に迫っていた。
貴族の若者ハーミアとライサンダーは恋仲だが、ハーミアの父イージアスはディミートリアスという若者とハーミアを結婚させようとしていた。
ハーミアが聞き入れないため、イージアスは「父の言いつけに背く娘は死刑とする」という古い法律に則って、シーシアスに娘ハーミアを死刑にすることを願い出る。
シーシアスは悩んだ末、自らの結婚式までの4日の内に、ハーミアへにディミートリアスと結婚するか死刑かを選ばせる。
ライサンダーと森へ駆け落ちすることにしたハーミアは、これを友人ヘレナに打ち明けた。
ハーミアの許嫁ディミートリアスを愛しているヘレナは、ハーミアを思うディミートリアスが彼らを追うと考え、自分も二人の後を追った。

一方、シーシアスとヒッポリタの結婚式で演じる芝居の練習のため、6人の職人達が夜の森で集まることを決めていた。

かくて、10人の人間が、夏至の夜に妖精の集う森へ出かけていくこととなる。

その森では妖精王オーベロンと女王タイターニアが夫婦喧嘩で仲違いしていた。
腹の虫が治まらないオーベロンは小妖精パックに、タイターニアのまぶたに「目を覚まして最初に見たものに恋してしまう」媚薬を塗るよう命ずる。
慌て者のパックは森で眠っていたライサンダーたちにも媚薬を塗る。
結果、ライサンダーとディミートリアスがヘレナを愛するようになってしまった。
さらにパックは森に来ていた職人のボトムの頭をロバに変えたのだが、目を覚ましたタイターニアが最初に観てしまったのがこのロバ男だった。

タイターニアが気の毒になったオーベロンは、彼女とロバ男に掛かった魔法を解き、2人は和解。
ライサンダーにかかった魔法も解かれ、ハーミアとの関係も元通りになる。
一方、ディミートリアスはヘレナに求愛。イージアスに頼んでハーミアの死刑を取りやめるよう説得する。
こうして2組の男女と妖精王夫婦は円満な関係に落ち着き、6人の職人たちもシーシアスとヒッポリタの結婚式で無事に劇を行うことになったのだった。
(2015/06/22(Mon) 14:58)
[推理・探偵小説]緑柱石の宝冠
原題:The Adventure of the Beryl Coronet
作家名:サー・アーサー・コナン・ドイル
初出:「ストランド・マガジン」1892年5月号初出。
訳者名:coderati訳


大銀行の頭取アレグザンダー・ホルダーはある高貴な人物――当時の英国皇太子すなわち後のエドワード7世と想像される――から緊急の借財を依頼される。高貴な人物は担保として「三十九個の巨大なベリルで飾られたコロネット」をホルダーに預け、翌月曜日の返済を約束して融資を受けた。
大きな取引を独断で行った頭取は、質草の宝冠を職場で保存する訳にも行かず、自宅に持ち帰る。
その鍵が暴かれ、宝冠から3つのベリルが外し取られていた。
警察は頭取の息子アーサーを容疑者として拘留。
アーサーは悪友サー・ジョージ・バーンウェルとつきあうウチに身持ちが悪くななり、父親に金の無心をしていたのだ。
顧客からの信頼という名誉、預かっていた宝石、そして息子を「失った」ホルダーは、窮してホームズに調査を依頼する。
当夜ホルダー家に居たのは、当人と息子アーサー、姪で養女のメアリー、女中3人と、雇い入れたばかりの小間使いの娘が1人。
ホームズは現場検証を開始する――。
(2015/06/21(Sun) 18:43)
[推理・探偵小説]同一事件
原題:A CASE OF IDENTITY
作家名:サー・アーサー・コナン・ドイル
初出:「ストランド・マガジン」1891年9月号
訳者名:加藤朝鳥/大久保ゆう改訳

現在はタイトルを「花婿失踪事件」とすることが通例。

ボヘミア王の事件の後のこと。
シャーロック・ホームズの事務所兼住居を訪れたメアリ・サザランド(メアリー・サザーランド)嬢の依頼は、婚約者ホズマ・エインジェル(ホズマー・エンジェル)の捜索だった。
父を亡くし、母とその再婚相手ウィンディバンクの3人で暮らすメアリには、タイピストとしての報酬と、信託されている遺産の年100ポンドほどの利息という収入があった。
メアリが外出することを嫌う義父が渡仏している間に、彼女は舞踏会に参加し、そこでホズマと出会う。
義父は会ったことのないホズマを嫌ったが、母は彼を大いに気に入り、義父が居ない間に結婚してしまえと、忙しく結婚式の手配をする。
その式の当日、教会で待つ新婦の前に滑り込んだ新郎の馬車はもぬけの殻。そのままホズマは行方知れずになってしまった――。
(2015/06/21(Sun) 15:38)
[フェアリーテール]ジャックと豆のつる
作家名:イギリスの童話/ジョゼフ・ジェイコブス(Joseph Jacobs)
訳者名:SOGO_e-text_library
英: Jack and the Beanstalk

昔々、あるところに貧しい老いた婦人と息子のジャックの二人が暮らしていた。
ある日ジャックは母親に言われて唯一の財産だった牝牛を売りに行ったが、それを途中で会った男の豆と交換してしまう。
怒った母親は豆を庭にすてた。すると次の朝、庭には巨大な豆のつるが生えていた。
ジャックが豆のつるを登って雲の上まで行くと、巨大が城があった。そこでジャックは巨人の女性と出会う。
巨人の女性はジャックに「自分の夫は人食い鬼なので見つからぬ内に逃げろ」と告げる。
そこへ夫の人食い巨人が帰ってくる。妻の巨人に匿われたジャックは、巨人が寝入った後に巨人の宝を奪い、家に戻る。
宝のおかげでしばらくは暮らせたが、それが尽きたので、ジャック再び豆の木を登る。
巨人の城へ忍び込み宝を奪ったが、巨人に気付かれてしまう。
急いで地上へ戻ったジャックが豆のつるを斧で切り倒すと、巨人は転落死した。
巨人の宝のおかげでジャックと母親は裕福になった。その後ジャックは美しい姫君を娶って、末永く幸せに暮らしたとさ。
(2014/09/16(Tue) 19:12)
[神話・伝承]えぞおばけ列伝
作家名:知里真志保(編・訳)

アイヌの人々の間に伝わる「おばけ(妖怪)」の小話、及び、ちょっと艶っぽい伝説・民話など。

知里真志保(ちり ましほ、1909年2月24日 - 1961年6月9日)は、アイヌの言語学者。文学博士。専攻はアイヌ語学。姉は、『アイヌ神謡集』の著者・知里幸恵。
(2014/03/26(Wed) 21:55)
[文学論など]芸術としての探偵小説
作家名:野村胡堂

銭形平次捕物控でおなじみの捕り物作家である胡堂先生による、1949年(昭和24年)宝石社刊行探偵小説専門雑誌『宝石』「百万円懸賞探偵小説コンクールC級(短篇部門)」の選評。
コンクール入選作品が発表されたのは「第3巻1号 通巻7号(昭和25年2月20日発行)」で、胡堂先生初め五名の先生方による「百万円懸賞当選作をめぐって」が掲載されたのは「第3巻2号 通巻8号(昭和25年4月20日発行)」
なお、文中上げられたタイトル「かむなぎうた」は日影丈吉の作で、二席。「黄色の輪」は川島郁夫の作で同じく二席。「『罪ふかき死』の構図」は土屋隆夫で一席(一等)の作品。
(参考資料:海外ミステリ総合データベース・ミスダス「別冊宝石総目録」)
(2014/01/30(Thu) 22:00)
[文学論など]文章を作る人々の根本用意
作家名:小川未明

小川 未明 (おがわ みめい/びめい、1882年(明治15年)4月7日 - 1961年(昭和36年)5月11日)は、小説家・児童文学作家。
本名は小川 健作(おがわ けんさく)。
「日本のアンデルセン」「日本児童文学の父」と呼ばれる。(代表的作品は「赤い蝋燭と人魚」かな)
作品は清潔なものが多く、1916年(大正5年)に「遊蕩文学(人間の遊蕩生活に纏絡する事実と感情とに重きを置いて、人性の本能的方面に於ける放縦淫逸なる暗黒面を主題とし、好んで荒色耽酒の惑溺境を描出せんとするものby評論家・赤木桁平)」論争が起きた時、遊蕩を描かない小説家は夏目漱石と小川未明くらいだと言われた。

なお、短編作品を得意としていたが、童話作家・坪田譲治によれば「非常に短気な性格」だったとかで、未明の童話がほとんど短編なのは発表の場が雑誌だったことによるが、短気な性格によるところも大きい、とのこと。

そんな(作風が)真面目な未明先生の創作論。
 われ/\が、何か思うところ、感ずるところを書きたいと望むことがある。そこで、先ずわれ/\は、最初に自分の感じをき出す文字を、あれこれと選択しつゝ紙に書いてみる。それが自分の感じとぴったり合しつゝ書き進むるようならば、もう文章のある域まで達したのであるが、これと反対に思うところ感ずるところが、一字一行にも骨が折れてどうにも書き進められない場合がある。徒らに苦んだ果は、自分には所謂いわゆる文章が書けないのではないかと絶望したような心持にさえなる。
 もし諸君の内に、こういう場合にぶつかった人があれば、余はこう注意したい。
 まず筆をおいて、単に文章を書こうとしたのか、それとも本当に書きたい思いや心持があって書こうとしたのか、そのいずれかを静かに考え返してみるがいい。そしてもし心の内に、美しい文字や流行の文句を使ってみたいから書こうとしたのだと心づいたら、それは一行の文章を成さなかったのが至当あたりまえなのである。その人はそういう文章を作ろうとしたことに対して、まずじることを悟らねばならない。
(2012/10/03(Wed) 19:03)
[神話・伝承]女王スカァアの笑い
作家名:フィオナ・マクラウド Fiona Macleod
訳者名:松村みね子(片山広子)

強い女王スカァアが剣持つ手の掌に死の影を握って支配していたスカイの島をクウフリンが立ち去った時、そこには彼の美を惜しむなげきがあった。

スカイ島の女戦士の支配者スカァアは、愛弟子クウフリンがアルスターの戦争のためにアイルランドへ戻ってしまったことを嘆いていた。
スカァアはクウフリンが島にいた間の出来事を回想する。
美男子のクウフリンはスカイ島の女性を誰一人として愛することがなかった。女達も彼を愛することが出来なかった。……狂気の女王スカァアが彼を愛していたからである。
女王はクウフリンの気を引くために、様々な、そして残酷なことを為した。
どうやら若いクウフリンには現実世界の女性に対する恋愛感情はない様子だ。
スカァアは戯れにクウフリンに「好きな女はいるか」と尋ねた。彼が「いる」と答えたとき、スカァアの脳裏には己の足元に転がるクウフリンの無惨な亡骸が思い浮かぶ。
クウフリンが去った後、悲しみに沈む狂気の女王の元に、女将軍が「難破した海賊船の生き残りを捉えた」という「朗報」を持って現れる。
スカァアは彼等を残酷に処刑し、笑う。
だが彼女の心の痛みは、決して癒えないのであった。
スカァア(スカアハ:Scáthach)
ケルト神話の女神。その名は「影」を意味する。「影の国(スカイの国)」と呼ばれる異界・冥府の女王。
呪術師であるが、むしろ武術に優れる。クー・フーリンの武芸の師。
弟子の中でも特に彼を気に入り、魔槍ゲイ・ボルグを与えた。
北欧神話のスカディ(巨人族の女神)に相当。

クウフリン(クー・フーリン:Cú Chulainn)
ケルト神話の英雄。太陽と光の神ルーと人間の王女デヒテラとの間に生まれた半神。
元の名はセタンタ(Setanta)で、クーフーリンは「クランの猛犬」の意。
大変な美男子だが、いざ戦闘となると、「額から光線」「あごが頭くらいの大きさになる」「両目の間に七つの瞳が生じる」「片方の目は頭の内側に入り、もう片方は外側へ飛び出す」「手足の指が七本に増える」「両頬には黄・緑・赤・青の筋が浮かぶ」「逆立った髪は、根本では黒く、先端に向かうほど赤く変色し、そこから血が滴る」という異形となる。
ある日ドルイド僧から「騎士となればアイルランドの歴史に名を残す英雄となるが若死にする」という予言を聞き、勇んで騎士となる。その修行のために「影の国」へ赴き、スカアハの弟子となった。
その最期は、師から授かったゲイ・ボルグを敵に奪われ、それに刺し貫かれるというもの。
この際に溢れた内臓を洗って腹に収めなおし、倒れぬように自ら石柱に体を縛り付けたという。
(2012/06/25(Mon) 15:36)
[フェアリーテール]六羽の白鳥
作家名:グリム兄弟 Bruder Grimm
訳者名:楠山正雄
独: Die sechs Schwäne

ある国の王には亡くなった前妻との間に六人の王子と一人の姫があった。ある日狩りに出掛けた王が道に迷っていると、老婆があらわれ、娘を妃にしてくれたなら助けるという。王は老婆(魔女)の提案を受け入れ、道案内をしてもらって城に戻る。程なく王は老婆の娘と結婚する。
新しい王妃は、七人の継子を排除しようとする。
王妃は呪いを掛けた絹の肌着を作り、王子達に触れさせる。途端に六人の王子達は白鳥に化身して飛び去ってしまう。ただ一人難を逃れた末の姫は、兄たちを捜して森へ入るが、夜が更けてしまったので、仕方なく森の中の小屋へ入る。
そこへ六羽の白鳥が現れる。白鳥たちは元の王子の姿に戻ると、妹姫に、この小屋が山賊小屋であること、新しい王妃が自分たちに呪いを掛けたこと、人の姿に戻れるのは夜間の本の短い間だけであること、呪いを解くにはエゾギク(アスター)の花で作った肌着を着なければならないこと、その肌着を作っている間は一言も口を利いてはならぬこと、を告げる。
間もなく王子達はまた白鳥の姿に変化してしまい、飛び立ってしまう。
姫は兄たちを助ける決心を固め、城へは戻らずにエゾギクの花を集めて肌着を作り始める。
森の中の樹の上で、花を集めて肌着を作り続ける姫。
隣国の若い王が彼女を見つけ声を掛けるが、姫は話すことも笑うこともしない。
姫が人品ただならぬことを見抜いた若い王は、彼女を妃にした。
所が若い王の母、つまり姑は姫のことが気に入らない。身元の知れぬ上に一言も口を利かず、菊の花で肌着を作り続ける姫はを不審に思ったのだ。
やがて若い王と姫との間に子供が生まれる。すると姑がこの子を攫ったうえに、眠っていた姫の口の周りに地を塗りつけ、「あの女は人食い鬼だ」と若い王はに訴える。王は妻を愛し信じており、
「彼女は信心深い心のキレイな人だ。人殺しなどするものか。彼女が口を利けたなら、きっと無実の証をすることだろう」
と、取り上げない。
しかし三度同じ事があれば、流石に不問にすることも出来ず、姫は裁判に掛けられる。
裁判の中でも姫は口を利かずにいたため、有罪となり、火刑の判決が降る。
姫は刑の執行のその瞬間まで無言でエゾギクの肌着を作り続けた。六人分の肌着はほぼ完成しており、あとは六着目の片袖を作るのみとなっていた。
しかし姫は火刑の薪の上へと引き出される。
まさに刑が執行されようとしたどのとき、六羽の白鳥が現れる。姫が投げた肌着に触れると呪いは解け、白鳥は元の王子の姿に戻る。――片袖が間に合わなかった末兄だけは、片腕が翼のままだったが――。
口を利くことが許された姫は、総ての次第を夫に告げる。
姫に罪がないことが判り、火刑台は濡れ衣を着せた姑のために使われることとなった。
(2012/06/25(Mon) 13:26)
[その他文献]小坂部伝説
作者名:岡本綺堂

綺堂先生が戯曲・小坂部姫を書くに当たって、「播州姫路の小坂部(長壁姫、小刑部姫、刑部姫)」について調査したちょっとしたことについての小まとめ的な文章というか、エッセイ・随筆というか。

因みにオサカベ姫とは、姫路城の天守閣に隠れ住むといわれる「妖怪」あるいは「守護神」。
蝙蝠を従えた老姫、または、十二単を着た気高い女性の姿をしていると伝えられる。
「姫の顔を見た者は即座に命を失う」「800匹の眷属を操り、人の心を読み、人の心をもてあそぶ」「住処に人が立ち入ると、身の丈1丈(約3メートル)に巨大化して追い払う」「年に一度だけ姫路城主と会い、城の運命を告げる」等の伝承がある。
正体は、一般には老いた狐とされる。別の説では、井上内親王(717〜775年。光仁天皇の廃后)が義理の息子・他部親王(光仁天皇の廃太子。桓武天皇の異腹弟)との間に産んだ不義の子、伏見天皇(1265〜1317年)が寵愛した女房の霊、蛇神(姫路では蛇をサカフと呼ぶことがあるため)、姫路城のある姫山の神、刑部氏の氏神「刑部明神」と「稲荷神」とが習合されたもの、等。猪苗代城の妖姫・亀姫の姉という「設定」もある。(この辺は天守物語参照)

綺堂先生の調査では「刑部姫は高師直(不詳〜1351年。塩冶高貞の奥さんに横恋慕して、吉田兼好に恋文を代筆させたけど、結局振られて、腹いせに高貞に謀反の罪を着せちゃったひと。この辺のエピが『仮名手本忠臣蔵』に利用されている)の娘」という説が出てきたので、長編小説小坂部姫もその設定を生かしたとのこと。
(2012/02/02(Thu) 15:01)
[戯曲]天守物語
作者名:泉鏡花

1917年初出の戯曲。台本形式。

播州姫路。白鷺城の天守には、あやかし達が棲んでいた。
主は絶世の美女・富姫。奥女中・薄を筆頭に、桔梗、萩、葛、女郎花、撫子の侍女達に傅かれている。
そこへ猪苗代から妹・亀姫が遊びに来る。お供は舌長姥と朱の盤。亀姫が手土産の「猪苗代の城主の首級」を眺めながら、煙管で一服したり、手鞠に興じたり。
亀姫の帰り際、富姫は鷹狩りの一行から奪った見事な鷹を土産として持たせたのだった。
その晩、天守に一人の若侍が上がって来た。
鷹匠の姫川図書之助は、行方の知れぬ鷹を探せと、城主・播磨守のに命じられてきたのだった。
怪異あやかしである富姫と対面しても一行に動じぬ図書之助の涼やかな態度に感じ入った富姫、本来なら生かして返さぬところを還してやることにした。図書之助から人間界、こと侍の世界の話を聞くうち、富姫はその理不尽さ呆れ、同情するうちに、その思いは思慕、恋情恋へと転じていた。
富姫は図書之助が天守へ登った証拠として、姫路城主が家宝「青竜の御兜」持たせてやるのだった。
ところが、その兜のために図書之助は家宝を盗み出したと疑われ、処刑されそうになる。
大立ち回りの末、あわやの所を逃げだした図書之助、天守へ駆け上り……。
(2012/01/30(Mon) 17:28)
[その他小説]十萬石(十万石)
作者名:泉鏡太郎(泉鏡花)

松代真田家第6代藩主・真田幸弘(幸豊)公と、家老・恩田木工民親のエピソード。
「上」は倹約を推し進める主君の心身を思って「小鳥を飼ってみては」と勧めた家臣某に対して、それは贅沢だと判じた幸豊公の某に対する裁断(仕打ちと云っても良いかも)と、それに対する恩田杢(木工)の忠言。
「下」は、恩田杢(木工)を家老職勝手係に取り立てようとしたときの顛末。

旧字・旧仮名
(2012/01/30(Mon) 16:48)
[寓話]獅子王《ライオン》と鼠《ネズミ》のこと
作家名:イソップ

「ねずみの恩がえし」「ライオンに恩返しをしたネズミ」「ライオンとねずみ」といったタイトルのイソップ寓話について、
英文(The Lion And The Mouse:タウンゼント版)+イソポのハブラス(Xixito , nezumino coto:天草版)+伊曾保物語(師子王と鼠の事:訳者不明)+通俗伊蘇普物語(獅子と鼠の話:渡部温版)
の4パターンを並べてみる試み。
それぞれちょっとずつニュアンスが違う様な気がするわけで。
各パターン共通な、大まかな粗筋。

ライオンが寝ている側でネズミが騒いでいた。一匹の鼠がふとした弾みでライオンの体の上に乗ってしまう。
ライオンは目を覚まし、ネズミを掴まえて殺そうと考える。
ネズミは必死で許しを請い、ライオンは殺すのを止めて放す。
暫く後、ライオンは猟師の罠に捕らえられる。
ライオンの窮地を知ったネズミが駆け付けて、「助けてもらったご恩をお返しします」とばかりに、罠を囓りきって、ライオンを助け出す。

教訓:情けは人のためならず。弱小な者も強大な者を助けることが出来る。
(2012/01/21(Sat) 15:51)
[児童文学・童話]ピーターパンとウェンディ
原題:PETER PAN PETER AND WENDY(ピーターパン:ピーターとウェンディ)
作家名:ジェームス・マシュー・バリー(Sir James Matthew Barrie)
訳者名:katokt

ピーターパンの物語は2作の小説と1作の戯曲(『ピーター・パンあるいは大人になりたがらない少年』:初演1904年(全三幕)。出版1928年(全五幕))を経て、現在皆が良く知る物語へと変化した。

以下あらすじ
厳格な父親と可愛らしい母親(どうやら過去にピーターパンと出会ったことがあるらしい)との間に生まれた三人の子供たち――ウェンディ・モイラ・アンジェラとジョン、そしてマイケルのダーリングきょうだい。
ある晩彼等の家にピーターパンがやってくる。
ところがピーターは子供たちの「乳母役」の犬に吠え立てられて、影を落として退散してしまった。
一週間後、ピーターは影を取り戻しに来た。ウエンディは影とピーターを縫い合わせる。
ピーターは「パパとママが僕が大人になったら、何になってほしいなんてことを話してる」事に幻滅して、生まれたその日に家を飛び出したと語る。
そして「乳母がよそ見をしてるときに乳母車から落ち」「七日の内に這い上がれなかった」「迷子の男の子達」が送り込まれるネバーランドで、男の子達の隊長をしているとも。(ちなみにネバーランドに女の子がいない理由は「女の子はカシコイから乳母車から落ちたりしない」から、らしい)
ウエンディと弟たちはピーターに誘われて(妖精ティンカーベルの「粉」の力で)空へと飛び出し、「2つ目の角をまがって、あとは朝までまっすぐ」の場所にあるネバーランドへ向かう。
ネバーランドではウエンディが皆のお母さん役となり、二人の弟たちは他の「迷子の男の子」同様にピーター達と冒険(遊び)暮らした。
人魚と出会い、インディアンと交流したり、ウエンディが男の子達にお話をしてやったり、フック船長率いる海賊と戦ったり……。
しかしやがて、ウェンディたちは、両親の家に帰りたいと訴え、ピーターは不承不承彼等をダーリング家へ戻す。
迷子の男の子達も、ウェンディの家の子どもになることになる。
ただし、ピーターはやはり大人になりたくないが為に、ダーリング家の子になることを拒む。
それでもウエンディと別れたくないピーターに、ウエンディ達の母親は「年に一度、春の大掃除のときだけ、ウェンディをネバーランドに連れて行く」という提案をした。
翌年、ピーターはウェンディを連れに来たが、その翌年は来ない。ある年は来たり、ずっと来なかったり。
暫くピーターが来ない年が続いたあと、何事もなかったかのようにピーターが訪れたときには、ウェンディはすっかり大人になっていた。彼女は結婚しており、ジェーンという娘がいた。
迷子の男の子達もみな立派な大人になっていて、それぞれの仕事を持ち、それぞれの家庭を持っている。
子供のままのピーターは、大人になったウェンディの代わりにジェーンを連れて、ネバーランドに飛び立った。

更に年月が流れ、ウエンディの髪には白いものが混っている。ジェーンも大人になって、マーガレットという娘がいた。
今ピーターは、春の大掃除の時期にはマーガレットをネバーランドへ連れて行っている。
マーガレットが大人になったら、ピーターのお母さん役はマーガレットの娘が、その娘が大人になったらそのまた娘が、受け継ぐことになるだろう。
(2011/06/25(Sat) 13:00)
[児童文学・童話]ケンジントン公園のピーターパン
原題:PETER PAN IN KENSINGTON GARDENS
作家名:ジェームス・マシュー・バリー(Sir James Matthew Barrie)
挿絵:アーサー・ラッカム(Arthur Rackham)
訳者名:katokt

高名な「人間とも鳥とも妖精ともつかない男の子」ピーターパンは、もともと小説『小さな白い鳥』の中で描かれたエピソード群の登場人物だった。
この小説中の13章〜18章がピーターパンの登場エピソードとされる。各章タイトルは以下の通り
  • 第十三章:ケンジントン公園ひと回り
  • 第十四章:ピーター・パン
  • 第十五章:鶫の巣
  • 第十六章:締め出しの時刻
  • 第十七章:小さな家
  • 第十八章:ピーターの山羊
後に作者バリは『小さな白い鳥』からピーターパン関連のエピソードを抜き出し、修正加筆して『ケンジントン公園のピーターパン(PETER PAN IN KENSINGTON GARDENS)』として出版した。
んだけど、何故か同タイトルで二章分(13章と18章)のテキストがないバージョンもあったりする。
で、このテキストは、後者の翻訳版。
以下あらすじ
生後7日の赤ん坊ピーターは、人になることを拒絶して、窓からケンジントン公園に向かって飛び出し、公園の「赤ん坊の王宮とサーペンタイン池の間の広々とした芝生」の上に着地した。
そこでピーターは、人間でも小鳥でもない「どっちつかず」となる。
ピーターは小鳥たちと一緒に笛を奏でて暮らすこととなり、やがて妖精達も仲良くなる。
ある時、マイミー(別訳では「メイミイ」)という少女が、公園の閉門時間に間に合わず、公園内に「閉め込まれ」てしまう。
マイミーは妖精達の舞踏会や婚礼の騒動に巻き込まれる。妖精達は眠るマイミーの為に小さな家を造る。しかしマイミーが夢から覚めると、その家は小さく小さくなって、やがて雪の中に消えてしまった。
時が過ぎ、ピーターは母の元に帰りたいと願うようになる。
ピーターは妖精達の力を借りて空を飛び、彼の生まれた家へ戻る。
開け放たれた窓から母の寝室へ戻るが、眠っている母親に呼びかけるのを躊躇する。
行方不明の赤ん坊の気配を感じた母親が、うわごとのように彼の名を呼ぶが、ピーターはそれに答えなかった。
公園での小鳥たちや妖精たちとの暮らしが捨てきれなかったのだ。
「公園へ一度戻って、友人達に別れの挨拶をしてから、もう一遍帰ってくる」と決めて公園へ舞い戻ったピーターだったが、結局何ヶ月も家へ戻らなかった。
妖精達が彼を戻そうとしなかったというのも理由の一つだった。彼等は理由を付けてはピーターを引き留めていた。
ある晩とうとう決心して家へ飛び戻ったピーターだったが、数ヶ月前は開け放たれていた窓には閂がかけられてい、中には入れない。
覗き見れば、母親はピーターではない赤ん坊を抱いて、幸せそうに笑っている。
ピーターは必死に母親を呼ぶが、その声は彼女には届かなかった。
こうしてピーターは永遠に「閉め出され」てしまったのだった。
一応「童話」カテに入れたけれど、実際は大人向けの作品かも知れない。
(2011/06/25(Sat) 11:47)

[次の20件]