入り口はありとあらゆるところにあり、その先はありとあらゆるところに繋がっている。
人には窓と思える場所も、床下も、天井裏も、壁の罅としか見えない場所も、ありとあらゆるところが入り口であり、その全てから入ることができ、入ることが許される。

裏口から入った者は、窓から入った者を不埒な侵入者と呼ぶかも知れない。
しかし玄関から入った者に、不正な闖入者と見られていることに、彼は気付かない。

玄関から入った者が、納戸の奥にしまわれた宝物にたどり着くとは限らない。
罅から染み込んだ者が、館の全てを知り尽くすこともある。

入り口はありとあらゆるところにあり、そこから中をのぞき見ることも、奥へ進む事も出来る。
どこへ行く事も出来る。どこにも行かないこともできる。

その奥の奥へたどり着いた者が、どこから入ってきたのかを、尋ねる必要は無い。

その中にいる限り、誰もが住人なのだから。


入り口は閉ざされてはいけない。入り口を塞いではいけない。