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ここは【お姫様倶楽部Petit】の備忘録的リンク集【Petitの本棚】です

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[児童文学・童話]としよりのお祖父さんと孫
作家名:グリム兄弟 Bruder Grimm(ヤーコプ・ルートヴィヒ・カール・グリム ヴィルヘルム・カール・グリム)
訳者名:金田鬼一
独:Der alte Großvater und der Enkel
KHM078

昔ある所に年老いて目も耳もきかなくなった老人がいた。彼は握力もなくなり自分で食事することも難しくなっていた。
家族は息子夫婦と孫が一人。
息子とその妻は自分一人では食事もままならなくなった老人を疎ましく思い、老人を部屋の隅に追いやって、粗末な陶器の皿で食事を摂らせるようにした。
しばらくして老人は皿を落として壊してしまった。息子の妻は悪態をつき、老人に安物の木の椀で食事するようにさせた。
しばらくすると孫が木切れ板きれを集めるようになった。息子(孫の父親)が何気なくその理由を問うと、
「小さな木の器を作っているんだ。お父さんとお母さんが年を取ったら、その器でご飯を食べさせてあげる」
悪意なく言う様子を見て、息子夫婦は自分たちが老人を冷遇していたことに気付いて涙した。
息子夫婦は老人の椅子を皆と同じ食卓に戻した。
(2021/08/15(Sun) 11:56)
[児童文学・童話]あのときの王子くん
作家名:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ Antoine de Saint-Exupery
翻訳者:大久保ゆう
翻訳の底本:Antoine de Saint-Exupery (1943) 「Le Petit Prince」
フランス語原題:Le Petit Prince、英語: The Little Prince

日本では『星の王子さま』のタイトルで知られているが、これはは岩波書店版の翻訳者であるフランス文学者の内藤濯によるもの。
原題を直訳すれば『小さい王子』あるいは『小さい大公』程度の意味になる。

「大切なものは、目に見えない (Le plus important est invisible)」

パイロットである「ぼく」は、飛行機の故障のためにサハラ砂漠に不時着する。水も食料も乏しく、周囲には誰もいない。
夜が明けて「ぼく」は小さな少年と出会う。彼は「家ほの大きさで、三つの火山と、成長して根を張れば小惑星を破壊して仕舞うであろうバオバブの芽、そして一輪きりの薔薇が咲いている小惑星からやってきた王子」だった。
唯一の話し相手であった薔薇と喧嘩をして、自分の星を出た王子は、様々な星を回り、ヘンテコな大人達と出会い、そして地球にやってきたのだ。
「ぼく」が飛行機の修理に手を焼いている間、王子はその旅の話を語って聞かせてくれた。
やがて「ぼく」の飛行機は直り、同じ頃、王子も自分の星へ帰る方法を知る。
その方法で王子が自分の星へ帰ることができたことを確信した「ぼく」は、夜空を見上げて王子のことを想うのだった。
(2021/04/06(Tue) 11:01)
[児童文学・童話]愛ちやんの夢物語
作家名:レウィス、キァロル(ルイス・キャロル/Lewis Carroll)
翻訳者:丸山英觀(丸山英観)

初出:「愛ちやんの夢物語」内外出版協會 1910(明治43)年2月1日発行

不思議の国のアリス(ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND あるいは ALICE IN WONDERLAND)の日本語訳。(完訳)

一番の特徴は、アリスの名前が日本語的に「愛ちゃん」と変更されていること。
そのほかに、飼猫のダイナは「玉ちゃん」に、チシャネコは「朝鮮猫」に、クロッケー(クローケー)は「鞠投げ」に、トカゲのビルは「甚公」に、フラミンゴは「紅鶴(和名)」に、タルトが「栗饅頭」に、ハートのジャックが「心臓《ハート》の軍人《ネーブ》」なっているのに、グリフォンは「グリフォン」なのは、わかりやすく置き換えられるものが思いつかなかったからだろうか。
(2018/07/06(Fri) 16:17)
[その他文献]字幕閑話
作家名:秘田余四郎

映画字幕翻訳家である作者の元に届けられる「困ったファンレター」に関する、ごく短い随筆。
秘田余四郎(ひめだ よしろう、1908年10月15日 - 1967年9月18日)は、翻訳家(仏文学)、小説家。本名・姫田嘉男。
(2018/05/30(Wed) 15:39)
[児童文学・童話]絵のない絵本
作家名:ハンス・クリスチャン・アンデルセン
訳者名:矢崎源九郎

 ある晩のこと、わたしはたいへん悲しい気持で、窓のそばに立っていました。ふと、わたしは窓をあけて、外をながめました。ああ、そのとき、わたしは、どんなに喜んだかしれません! そこには、わたしのよく知っている顔が、まるい、なつかしい顔が、遠い故郷からの、いちばん親しい友だちの顔が、見えたのです。それは月でした。

月が語った、三十余編の小さな物語。

【関連作品】katokt訳

(2018/05/17(Thu) 14:12)
[その他文献]サンタクロースはいるんだ
原著名:YES, VIRGINIA, THERE IS A SANTA CLAUS
作者名:ニューヨーク・サン紙社説(担当:フランシス・ファーセラス・チャーチ) The New York Sun (written by Francis Pharcellus Church)
翻訳者名:大久保ゆう

編集者さま: 私は8歳です。
私の何人かの友だちはサンタクロースはいないと言います。
パパは「サン新聞が言うことならそのとおりだ」と言います。
どうか私に本当のことを教えてください; サンタクロースはいるのでしょうか?
[文学論など]スランプ
作家名:夢野久作

夢野先生、締め切り打っ千切って逃走か!?

スランプに陥ったという作家先生が原稿依頼主の出版社に宛てた言い訳のお手紙。
作家は「スランプだ、ペンが一寸も動かない」といいながら「スランプに関する事だけはスラスラと書けるというのは何という皮肉」と頭を抱える。

底本である「夢野久作全集11」(筑摩書房)は 評論随筆を集めた巻であるということなので、コレはもしかして夢野先生の本音なのかも?
なお、文中「宛先」となっているぷろふいる社は実在した出版社で、1933年から1937年まで探偵小説専門誌「ぷろふいる」を発行していた。
(2015/10/10(Sat) 21:23)
[戯曲]眞夏の夜の夢(真夏の夜の夢)旧字旧仮名
真夏の夜の夢
原題:A Midsummer Night's Dream
作家名:シェークスピヤ(シェイクスピア)
訳者名:坪内逍遙

イングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアによる戯曲。
(このテクストは「台本」形式です)
以下あらすじ。

アセンズ(アテナイ)公シーシアス(テセウス)とアマゾン国のヒッポリタ(ヒッポリュテ)との結婚式が間近に迫っていた。
貴族の若者ハーミアとライサンダーは恋仲だが、ハーミアの父イージアスはディミートリアスという若者とハーミアを結婚させようとしていた。
ハーミアが聞き入れないため、イージアスは「父の言いつけに背く娘は死刑とする」という古い法律に則って、シーシアスに娘ハーミアを死刑にすることを願い出る。
シーシアスは悩んだ末、自らの結婚式までの4日の内に、ハーミアへにディミートリアスと結婚するか死刑かを選ばせる。
ライサンダーと森へ駆け落ちすることにしたハーミアは、これを友人ヘレナに打ち明けた。
ハーミアの許嫁ディミートリアスを愛しているヘレナは、ハーミアを思うディミートリアスが彼らを追うと考え、自分も二人の後を追った。

一方、シーシアスとヒッポリタの結婚式で演じる芝居の練習のため、6人の職人達が夜の森で集まることを決めていた。

かくて、10人の人間が、夏至の夜に妖精の集う森へ出かけていくこととなる。

その森では妖精王オーベロンと女王タイターニアが夫婦喧嘩で仲違いしていた。
腹の虫が治まらないオーベロンは小妖精パックに、タイターニアのまぶたに「目を覚まして最初に見たものに恋してしまう」媚薬を塗るよう命ずる。
慌て者のパックは森で眠っていたライサンダーたちにも媚薬を塗る。
結果、ライサンダーとディミートリアスがヘレナを愛するようになってしまった。
さらにパックは森に来ていた職人のボトムの頭をロバに変えたのだが、目を覚ましたタイターニアが最初に観てしまったのがこのロバ男だった。

タイターニアが気の毒になったオーベロンは、彼女とロバ男に掛かった魔法を解き、2人は和解。
ライサンダーにかかった魔法も解かれ、ハーミアとの関係も元通りになる。
一方、ディミートリアスはヘレナに求愛。イージアスに頼んでハーミアの死刑を取りやめるよう説得する。
こうして2組の男女と妖精王夫婦は円満な関係に落ち着き、6人の職人たちもシーシアスとヒッポリタの結婚式で無事に劇を行うことになったのだった。
(2015/06/22(Mon) 14:58)
[推理・探偵小説]緑柱石の宝冠
原題:The Adventure of the Beryl Coronet
作家名:サー・アーサー・コナン・ドイル
初出:「ストランド・マガジン」1892年5月号初出。
訳者名:coderati訳


大銀行の頭取アレグザンダー・ホルダーはある高貴な人物――当時の英国皇太子すなわち後のエドワード7世と想像される――から緊急の借財を依頼される。高貴な人物は担保として「三十九個の巨大なベリルで飾られたコロネット」をホルダーに預け、翌月曜日の返済を約束して融資を受けた。
大きな取引を独断で行った頭取は、質草の宝冠を職場で保存する訳にも行かず、自宅に持ち帰る。
その鍵が暴かれ、宝冠から3つのベリルが外し取られていた。
警察は頭取の息子アーサーを容疑者として拘留。
アーサーは悪友サー・ジョージ・バーンウェルとつきあうウチに身持ちが悪くななり、父親に金の無心をしていたのだ。
顧客からの信頼という名誉、預かっていた宝石、そして息子を「失った」ホルダーは、窮してホームズに調査を依頼する。
当夜ホルダー家に居たのは、当人と息子アーサー、姪で養女のメアリー、女中3人と、雇い入れたばかりの小間使いの娘が1人。
ホームズは現場検証を開始する――。
(2015/06/21(Sun) 18:43)
[推理・探偵小説]同一事件
原題:A CASE OF IDENTITY
作家名:サー・アーサー・コナン・ドイル
初出:「ストランド・マガジン」1891年9月号
訳者名:加藤朝鳥/大久保ゆう改訳

現在はタイトルを「花婿失踪事件」とすることが通例。

ボヘミア王の事件の後のこと。
シャーロック・ホームズの事務所兼住居を訪れたメアリ・サザランド(メアリー・サザーランド)嬢の依頼は、婚約者ホズマ・エインジェル(ホズマー・エンジェル)の捜索だった。
父を亡くし、母とその再婚相手ウィンディバンクの3人で暮らすメアリには、タイピストとしての報酬と、信託されている遺産の年100ポンドほどの利息という収入があった。
メアリが外出することを嫌う義父が渡仏している間に、彼女は舞踏会に参加し、そこでホズマと出会う。
義父は会ったことのないホズマを嫌ったが、母は彼を大いに気に入り、義父が居ない間に結婚してしまえと、忙しく結婚式の手配をする。
その式の当日、教会で待つ新婦の前に滑り込んだ新郎の馬車はもぬけの殻。そのままホズマは行方知れずになってしまった――。
(2015/06/21(Sun) 15:38)
[歴史・史料関連]歴史学における常識
作家名:ジェラルド・W・シェルバッハ Gerald W. Schlabach
訳者名:SOGO(SOGO_e-text_library)
英: A Sense of History: Some Components

大学の助教授(現在は教授になっておられる様子)史学を志す学生に送った文章。
13項目からなる。
(2014/09/16(Tue) 17:31)
[児童文学・童話]町のお姫さま
作家名:小川未明

「寂しいところ」が大好きだというお姫様。
どこでも良いから人のいないところで暮らしたいと言い出した。
人里離れた山奥までついて行った家臣達は退屈で仕方がないのだが、姫様ご本人は自慢の美声で歌ったり得意の楽器を奏でたりで、ちっとも寂しくないというからから困ったモノ。
ところがあるとき姫様は、自分より良い声で歌い、見事な腕前で琴を弾くその音を耳にする。
されど家臣達の耳には松風と鳥の囁きが聞こえるばかり。
しかし姫様は「ここはやかましくて仕方ない」と、今度は人家のない海辺へ住まいを移すことに。
家臣達はさらに退屈するのだが、そこでも姫様は歌い奏でてご満悦。
ところがある日
「毎晩星達が歌い鳴らすので、自分の音楽に身が入らない」
もっと寂しいところへ行きたいと言い出した。
辟易した知恵者の家臣は、姫様を賑やかな街へ連れ出した。
初めは驚いた姫様。でも、街では誰も姫様の音楽の「じゃま」をしないので、思う存分歌えると、自分の美声と名演奏を心に誇り、街で住み暮らしたのだとさ。
(2014/02/02(Sun) 18:43)
[児童文学・童話]お姫さまと乞食の女
作家名:小川未明

古く寂しい城に住むお姫様は生まれてこの方城から出たことがない。
お姫様は小鳥一羽を友として、城の奥で暮らしていたが、常々世間を見て見たいと思っていた。
ある時お城に物乞いの女が迷い込む。
お姫様はその姿のみすぼらしさを怪しむが、よくよく見れば自分と同じ年頃の美しい娘であった。
物乞いの娘の身の上話を聞くうちに、お姫様の世間への興味は増して行く。
ついには物乞いと入れ替わって城外へ旅立つことにした。
お姫様は外の世界で得意の歌や演奏を生かして、旅芸人のような自由気ままな生活を始める。
そのころお姫様の身代わりにさせられた物乞いの娘はお城で心細く暮らしていた。
お姫様の飼い鳥に自らの身の不自由さを重ね見た娘は、小鳥を空に放つ。
放たれた鳥は故郷の南の港町へ戻った。
その町でかのお姫様が望郷の唄を歌っていたのだ。
お姫様は小鳥に導かれるように故郷の城へ戻る。
ところが城の様子が少々違っている。
事情を心得ていた侍女は泣きながらお姫様に告げた。
お殿様から宴席で歌うように言われた娘は、その素養がないことを言うこともできず、ついに井戸に身を……。

初出:雑誌『童話』 1922年(大正11)4月
(2014/02/02(Sun) 16:37)
[文学論など]芸術としての探偵小説
作家名:野村胡堂

銭形平次捕物控でおなじみの捕り物作家である胡堂先生による、1949年(昭和24年)宝石社刊行探偵小説専門雑誌『宝石』「百万円懸賞探偵小説コンクールC級(短篇部門)」の選評。
コンクール入選作品が発表されたのは「第3巻1号 通巻7号(昭和25年2月20日発行)」で、胡堂先生初め五名の先生方による「百万円懸賞当選作をめぐって」が掲載されたのは「第3巻2号 通巻8号(昭和25年4月20日発行)」
なお、文中上げられたタイトル「かむなぎうた」は日影丈吉の作で、二席。「黄色の輪」は川島郁夫の作で同じく二席。「『罪ふかき死』の構図」は土屋隆夫で一席(一等)の作品。
(参考資料:海外ミステリ総合データベース・ミスダス「別冊宝石総目録」)
(2014/01/30(Thu) 22:00)
[文学論など]捕物小説のむずかしさ
作家名:野村胡堂

銭形平次捕物控でおなじみの捕り物作家である胡堂先生が、捕物小説に関して書いた短文エッセー。
 私は草深い奥州の百姓の子として生れた。私の少年時代には、家族のうちにも、天保安政生れの老人があり、南部藩の百姓一揆の恐ろしさを身を以て経験した人も少くはなかった。従って私は侍階級の横暴と驕慢をいやが上にも聴かされて育ち、筆を執るようになってからは、侍階級の歪められた道徳を、非難し揶揄やゆすることに興味を持っていたらしい。
江戸は遠くになりにけり……。
(2014/01/30(Thu) 21:32)
[文学論など]探偵小説と音楽
作家名:野村胡堂

銭形平次捕物控でおなじみの捕り物作家であり、音楽評論家でもある胡堂先生が、探偵(推理)小説と音楽に関して書いた短文エッセー。
 これは他の場合にも書いたことであるが、小説の中に扱われた音楽の知識が、どんなに間違って居るかを、刻明こくめいに集めた英文の著書があるということだが、不思議なことに日本の小説に現われた、音楽上の誤謬と出鱈目については、まだかつて指摘した人は無いからだ。
両方の知識を持つ胡堂先生だからこその一文。
(2014/01/30(Thu) 17:40)
[文学論など]文章を作る人々の根本用意
作家名:小川未明

小川 未明 (おがわ みめい/びめい、1882年(明治15年)4月7日 - 1961年(昭和36年)5月11日)は、小説家・児童文学作家。
本名は小川 健作(おがわ けんさく)。
「日本のアンデルセン」「日本児童文学の父」と呼ばれる。(代表的作品は「赤い蝋燭と人魚」かな)
作品は清潔なものが多く、1916年(大正5年)に「遊蕩文学(人間の遊蕩生活に纏絡する事実と感情とに重きを置いて、人性の本能的方面に於ける放縦淫逸なる暗黒面を主題とし、好んで荒色耽酒の惑溺境を描出せんとするものby評論家・赤木桁平)」論争が起きた時、遊蕩を描かない小説家は夏目漱石と小川未明くらいだと言われた。

なお、短編作品を得意としていたが、童話作家・坪田譲治によれば「非常に短気な性格」だったとかで、未明の童話がほとんど短編なのは発表の場が雑誌だったことによるが、短気な性格によるところも大きい、とのこと。

そんな(作風が)真面目な未明先生の創作論。
 われ/\が、何か思うところ、感ずるところを書きたいと望むことがある。そこで、先ずわれ/\は、最初に自分の感じをき出す文字を、あれこれと選択しつゝ紙に書いてみる。それが自分の感じとぴったり合しつゝ書き進むるようならば、もう文章のある域まで達したのであるが、これと反対に思うところ感ずるところが、一字一行にも骨が折れてどうにも書き進められない場合がある。徒らに苦んだ果は、自分には所謂いわゆる文章が書けないのではないかと絶望したような心持にさえなる。
 もし諸君の内に、こういう場合にぶつかった人があれば、余はこう注意したい。
 まず筆をおいて、単に文章を書こうとしたのか、それとも本当に書きたい思いや心持があって書こうとしたのか、そのいずれかを静かに考え返してみるがいい。そしてもし心の内に、美しい文字や流行の文句を使ってみたいから書こうとしたのだと心づいたら、それは一行の文章を成さなかったのが至当あたりまえなのである。その人はそういう文章を作ろうとしたことに対して、まずじることを悟らねばならない。
(2012/10/03(Wed) 19:03)
[児童文学・童話]赤い姫と黒い皇子
作家名:小川未明

ある国に赤い服をまとった美しい姫「赤い姫」がいた。
隣国の皇子から求婚された姫は、皇子の人となりを探ろうと家臣を送り込む。
姫を娶りたい皇子は家臣を盛大に饗す。帰国した家臣は姫に「立派な皇子で国も豊か」と報告する。
慎重な姫は別の家臣に乞食の形をさせて隣国へ紛れ込ませる。
人々の噂を聞き集めた家臣は、姫に「皇子は外出時には、黒尽くめの装束に、黒のメガネ、黒い馬車に乗る」と報告する。
少々気味悪く思った姫は、黒塗りの馬車に乗った黒い皇子の幻を見るようになる。
黒い皇子に嫁ぐことを決断した姫。しかし、ことごとく予言を当てるという老婆に「皇子と結婚すれば、国に疫病が流行る」と言われる。
国を思う姫は家臣たちの勧めを受け入れて、遠い島へ逃げ出し、身を隠すことにする。
沖へと漕ぎだす船は、やがて静かに沈み始める。
陸で船を見送っていた人々は、姫の赤い服が海を染める幻を見る。
姫が来ないことを案じた黒い皇子は、姫を追って馬車を走らせる。
夜が明けると、黒い皇子の姿も消えていた。
夕焼けの美しい晩方、海の上に雷がなり、馬車が駆けるようにして黒雲が海の彼方に流れてゆく。
人々は、皇子が姫を追ってゆくさまだと信じている。
(2012/10/03(Wed) 17:33)
[フェアリーテール]六羽の白鳥
作家名:グリム兄弟 Bruder Grimm
訳者名:楠山正雄
独: Die sechs Schwäne

ある国の王には亡くなった前妻との間に六人の王子と一人の姫があった。ある日狩りに出掛けた王が道に迷っていると、老婆があらわれ、娘を妃にしてくれたなら助けるという。王は老婆(魔女)の提案を受け入れ、道案内をしてもらって城に戻る。程なく王は老婆の娘と結婚する。
新しい王妃は、七人の継子を排除しようとする。
王妃は呪いを掛けた絹の肌着を作り、王子達に触れさせる。途端に六人の王子達は白鳥に化身して飛び去ってしまう。ただ一人難を逃れた末の姫は、兄たちを捜して森へ入るが、夜が更けてしまったので、仕方なく森の中の小屋へ入る。
そこへ六羽の白鳥が現れる。白鳥たちは元の王子の姿に戻ると、妹姫に、この小屋が山賊小屋であること、新しい王妃が自分たちに呪いを掛けたこと、人の姿に戻れるのは夜間の本の短い間だけであること、呪いを解くにはエゾギク(アスター)の花で作った肌着を着なければならないこと、その肌着を作っている間は一言も口を利いてはならぬこと、を告げる。
間もなく王子達はまた白鳥の姿に変化してしまい、飛び立ってしまう。
姫は兄たちを助ける決心を固め、城へは戻らずにエゾギクの花を集めて肌着を作り始める。
森の中の樹の上で、花を集めて肌着を作り続ける姫。
隣国の若い王が彼女を見つけ声を掛けるが、姫は話すことも笑うこともしない。
姫が人品ただならぬことを見抜いた若い王は、彼女を妃にした。
所が若い王の母、つまり姑は姫のことが気に入らない。身元の知れぬ上に一言も口を利かず、菊の花で肌着を作り続ける姫はを不審に思ったのだ。
やがて若い王と姫との間に子供が生まれる。すると姑がこの子を攫ったうえに、眠っていた姫の口の周りに地を塗りつけ、「あの女は人食い鬼だ」と若い王はに訴える。王は妻を愛し信じており、
「彼女は信心深い心のキレイな人だ。人殺しなどするものか。彼女が口を利けたなら、きっと無実の証をすることだろう」
と、取り上げない。
しかし三度同じ事があれば、流石に不問にすることも出来ず、姫は裁判に掛けられる。
裁判の中でも姫は口を利かずにいたため、有罪となり、火刑の判決が降る。
姫は刑の執行のその瞬間まで無言でエゾギクの肌着を作り続けた。六人分の肌着はほぼ完成しており、あとは六着目の片袖を作るのみとなっていた。
しかし姫は火刑の薪の上へと引き出される。
まさに刑が執行されようとしたどのとき、六羽の白鳥が現れる。姫が投げた肌着に触れると呪いは解け、白鳥は元の王子の姿に戻る。――片袖が間に合わなかった末兄だけは、片腕が翼のままだったが――。
口を利くことが許された姫は、総ての次第を夫に告げる。
姫に罪がないことが判り、火刑台は濡れ衣を着せた姑のために使われることとなった。
(2012/06/25(Mon) 13:26)
[その他文献]小坂部伝説
作者名:岡本綺堂

綺堂先生が戯曲・小坂部姫を書くに当たって、「播州姫路の小坂部(長壁姫、小刑部姫、刑部姫)」について調査したちょっとしたことについての小まとめ的な文章というか、エッセイ・随筆というか。

因みにオサカベ姫とは、姫路城の天守閣に隠れ住むといわれる「妖怪」あるいは「守護神」。
蝙蝠を従えた老姫、または、十二単を着た気高い女性の姿をしていると伝えられる。
「姫の顔を見た者は即座に命を失う」「800匹の眷属を操り、人の心を読み、人の心をもてあそぶ」「住処に人が立ち入ると、身の丈1丈(約3メートル)に巨大化して追い払う」「年に一度だけ姫路城主と会い、城の運命を告げる」等の伝承がある。
正体は、一般には老いた狐とされる。別の説では、井上内親王(717〜775年。光仁天皇の廃后)が義理の息子・他部親王(光仁天皇の廃太子。桓武天皇の異腹弟)との間に産んだ不義の子、伏見天皇(1265〜1317年)が寵愛した女房の霊、蛇神(姫路では蛇をサカフと呼ぶことがあるため)、姫路城のある姫山の神、刑部氏の氏神「刑部明神」と「稲荷神」とが習合されたもの、等。猪苗代城の妖姫・亀姫の姉という「設定」もある。(この辺は天守物語参照)

綺堂先生の調査では「刑部姫は高師直(不詳〜1351年。塩冶高貞の奥さんに横恋慕して、吉田兼好に恋文を代筆させたけど、結局振られて、腹いせに高貞に謀反の罪を着せちゃったひと。この辺のエピが『仮名手本忠臣蔵』に利用されている)の娘」という説が出てきたので、長編小説小坂部姫もその設定を生かしたとのこと。
(2012/02/02(Thu) 15:01)

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