【歴史】
「ガイア大陸」を最初に統一したのは「ジン王朝」であった。ジンは暴力による恐怖政
治を行い、10年間大陸を支配していた。
やがて市井の勇者・「ノァール・ハーン」が『自由と自治』を旗印に立ち上がると、そ
れに賛同する者達が「諸国連盟軍」を結成。独裁政権に宣戦布告する。
厳しい闘いに勝ち残った「諸国連盟軍」は、勇者・ハーンを勝利の象徴として玉座に据
えた。国の名も、彼にちなんで「ハーン帝国」と改められた。
その後ハーン帝国は、ノァールの血筋を代々の帝王とし、栄華を極めた。
ところが13代皇帝「ジオ3世」は『己は皇帝の器ではない』と宣し、その位を重臣「ヨ
ルムンガンド・ギュネイ」に禅譲。
こうしてハーン帝国は13代400年の歴史をあっさりと閉じた。
ヨルムンガンドは帝国名を「神聖ギュネイ帝国」と改め、ジオ3世を内陸の温暖な土地
「ミッド」に大公として封じる。
それから14年。ヨルムンガンドが崩じると、二人の皇子の間に帝位継承争いが起こる。
ヨルムンガンドは正室の産んだ第二皇子フレキを継承者に望んでいたが、帝位は側室の
子である第一皇子フェンリルが継いだ。
そしてフレキは公爵として、大陸北端の地「ガップ」に封じ込められた。
その翌年、「事件」は起こる。
【発端】
フェンリル皇帝の治世第2年。帝国に属する小国(小数民族自治領や、臣籍に落とされ
た皇族の治める地)が「敵」の侵略を受けた。
人鬼と化した者は、強大な破壊力を手に入れる。見返りに、彼らは倫理や道徳を失い、
本能をむき出しにする。喰う事、争う事、そして嬲る事。それ以外を考える事ができなく
なる。
人鬼に喰われ、傷付けられ、犯された人間もまた、人鬼に堕ちる。こうして人鬼は次第
に数を増やしていった。
まるで悪性の流行病のように、国力を槎ぎ落としてゆく「真鬼」を止めるすべは一つし
かなかった。宝珠剣【アーム】のみが、鬼を倒す事ができるのだ。
皇帝フェンリルは全国に詔を発した。
「アームを用い人鬼を駆逐した者に望み通りの褒美を与えよう」
詔に応じて、あまたの猛者が立ち上がった。
やがて人々は彼らを「人鬼狩人【グールハンター】」と呼ぶようになった。
それから5年。人鬼狩人は多くの人鬼を倒した。
しかし人鬼の数は増すばかりだった。
【アーム(laAme)】
アームは一見すると宝珠そのものである。
形状は真球で、大きさは女の拳大。色はピジョンブラッド…真紅に輝いている。
「彼ら」はある種の「意思【おもい】」を持っており、その意思によって所有者を選ぶ。
この武器がアーム…古い言葉で「魂」を意味する…と呼ばれているのはこのためである。
「彼ら」がどのような規準で所有者を選別するのかは不明だ。
しかし「意志【ちから】」が強い事が第一条件ではあるらしい。
選ばれた所有者は、アームの力と存在そのものを己と同化させることとなる。有り体に
言えば、「溶け込む」のだ。
腰、胸、手、足、頭、肩や背…所有者の身体の「アームが同化した場所」には、そのアー
ムの「意思」を表すものと思われる紋章が浮かび上がる。
そしてアームは、自身が選んだ所有者が望む時、望む形状の武器に化身して、その紋章
のある部位から現れる。
さて。
アームは持つ者の「意志」を攻撃力に替える武器である。
「意志」の強い者が振るえば、おそらくは岩をも砕くだろう。
なお、「意志」の弱い者がアームを手にした際、大概の場合は「単なる宝珠」のままで、
なんの変化も起こらない。
しかし「強い意思を持ったアーム」は、人間の意志、ひいてはその者の身体を乗っ取る
可能性を秘めている。